クレジット
作詞・作曲:Tetsuji Morohira
収録アルバム:黄昏れた景色の中で(1993)
プロデュース:Tetsuji Morohira
アレンジ:Takashi Takeoka, Takara Kamioka
レーベル:South Wind Records
最近、諸平さんご本人と久しぶりに連絡が取れた。
それもあって、改めてこの曲について書いてみようと思う。
I Love You So を聴くと、
なぜか駅のホームの空気を思い出す。
夕方の少し冷えたコンクリート。
遠くで電車がブレーキを鳴らす音。
あの感じだ。
この曲は1993年、
諸平哲司の2枚目のアルバム
『黄昏れた景色の中で』に収録されている。
まだ彼が 79.5 のディレクターになるずっと前。
音楽家として、心揺さぶる詩と曲に溢れた作品。
当時のライブでは、
ほぼ必ず演奏されていた曲だった。
私が諸平さんに出会ったのは1990年。
まだ19か20歳くらいで、
広告代理店で働いていた頃の上司だった。
当時の中途半端なギタリストだった私にとっては
シンガーでありギタリストであり、
完全に雲の上の人だった。
同じ会社にいるのに、
音楽の話になると急に距離が遠くなる。
スタジオの奥に置かれている
古いヴィンテージアンプみたいな人だった。
存在は近いのに、触るのが少し怖い。
会社を辞めたあと再会して、
1997年に私は彼にギターを教わることになる。
ただ、正直に言うと
教わるというより、
実力差を見せつけられた時間だった。
遠かった。
本当に遠かった。
東京の夜景の向こうに見える
高速道路のテールランプみたいに、
追いつけそうで全然追いつかない。
結局私は挫折して、
そのまま海外に行くことになる。
腕を磨く、なんて格好いい言い方をしているけれど、
半分くらいは、逃げだった気もする。
まあ……若かった。
負けず嫌いだけは立派だったから。
「I Love You So」は
タイトルだけ見ると、とてもシンプルなラブソングだ。
でも諸平さんの歌は、
ただ甘いだけでは終わらない。
夕暮れの駅のホーム。
なかなか来ない電車。
錆びたレールに映る顔。
その言葉の背中で、
ブルースロックのギターがずっと鳴っている。
そういう都会の風景の中に、
人の弱さがぽつんと置かれている。
その弱さを、
変に美しく飾らない。
むしろ少し不器用なまま
歌の中に残してしまう。
そこが、
諸平哲司の歌の魅力だと思う。
私自身、今は昔ほど
ギターが思うように弾けない。
指も、
若い頃みたいには動かない。
まあ、
長く使ったアンプみたいなものだ。
ノイズは増えるけど、音はまだ出る。
それでも彼の音楽を聴くと、
あの頃の空気だけは
不思議とそのまま戻ってくる。
I Love You So
シンプルな言葉だけれど、
この曲を聴くと、私は思う。
愛ってたぶん、
格好よく言えるものじゃない。
夕暮れのホームで
少しイライラしながら電車を待つみたいな、
そんな時間の中にある。
諸平さんの歌には、
そういう現実の温度がある。
センチメンタルで、切なくて、
そして綺麗なギターフレーズの数々。
だから今でも、
ふと聴きたくなるのだと思う。

