🎵『Vasoline』 Stone Temple Pilots (1994)

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🎵『Vasoline』 Stone Temple Pilots (1994)

Vasoline – Stone Temple Pilots (1994)

収録:アルバム『Purple』(1994)
作詞:Scott Weiland
作曲:Dean DeLeo, Robert DeLeo, Eric Kretz, Scott Weiland
Billboard Modern Rock Tracks:1位(2週間)
Producer:Brendan O’Brien

Vasoline
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■ “抜け出せない人生”を、粘つくグルーヴで描いた STP の象徴曲

「Vasoline」は、Stone Temple Pilots の2ndアルバム『Purple』の中でも際立ってスリリングな1曲だ。
グランジ全盛期の1994年、彼らは“シアトル勢のフォロワー”と見なされることも多かったが、
この曲は明らかに STP 独自の音世界を確立したタイミングを象徴する楽曲でもある。

粘りつくようなギターリフ、異様なテンションのベースライン、
Scott Weiland の乾いた声とドラッグの影を含む歌詞。
そのすべてが “Vasoline(ワセリン)”という比喩に結びついている。


■ “抜けようとするほど沈む”という Scott の人生の比喩

● 1)“何が本物で、何が売り物なのか”

曲冒頭は非常に象徴的だ。

“One time a thing occurred to me, what’s real and what’s for sale?”
あるとき思ったんだ。何が本物で、何が売り物なんだろう?

Scott がよく語っていた、
名声・欲望・自己像の境界線が曖昧になる感覚 がここにある。

続くラインも非常に彼らしい。

“Blew a kiss and tried to take it home”
口づけを吹きかけて、それを家に持ち帰ろうとした。

“何かを手に入れたいのに、自分は空っぽ”
そんな虚無が滲む。


● 2)“見えないものを探し続ける”という終わらない渇き

サビは曲の核心だ。

“Isn’t you, isn’t me, search for things that you can’t see”
それは君じゃないし、僕でもない。見えない何かを探し続けてる。

Scott が何度も語った “空虚を埋めるための衝動” が、そのまま歌詞になっている。
名声を掴んでも、愛を得ても、
どこか “ここではない何か” を探し続けてしまう。

“Going blind, out of reach, somewhere in the vasoline”
見えなくなって、届かなくなって、ワセリンの中に沈むように。

この “vasoline” は表向き“ぬるぬるした場所で抜け出せない感覚”だが、
Scott 自身は生前こう説明している。

“It’s about feeling stuck… like flies in vaseline.”
「これは“抜け出せない人生”についての曲なんだ。
まるでワセリンにハマったハエみたいな気分の。」

依存、環境、苦悩、自分自身。
どれからも簡単には逃れられない……そんな実感が刻まれている。


● 3)“Punch drunk and without bail” —— 酔わされ、逃げられない人生

2番は彼の人生の混乱そのものだ。

“Two times and it has rendered me, punch drunk and without bail”
二度目でもうノックアウト同然、保釈金もなく逃げられない。

Scott の言葉すべてが“現実から抜け出せない男の独白”のようだ。

“Think I’d be safer all alone”
ひとりのほうが安全だと思うんだ。

これは彼が後年語った“孤独と依存の悪循環”と完全に重なる。


● 4)「嘘を飲んで生きていくしかない」という皮肉

ブリッジの部分は STP の中でも最も暗示的なラインだ。

“You’ll see the look and you’ll see the lies
You’ll eat the lies and you will”

その表情を見るだろう、そして嘘も見る。
その嘘を飲み込み、君もそうして生きていく。

業界、人間関係、自己欺瞞……
Scott が抱えていた“嘘の社会”がここで露骨に表現される。


● 5)抜け出せず、ずっと同じ場所にいる

3番で曲は円環のように戻ってくる。

“Flies in the vasoline we are
Keep gettin’ stuck here all the time”

僕らはワセリンの中のハエ。
いつも抜け出せず、ここに引っかかっている。

決して希望を示さないが、
それでもどこか “この絶望を歌にすることで救いを見つけている”
そんな痛切な祈りのような曲だ。


■ 粘りつくリフ、奇妙なグルーヴ、90年代特有の歪み

  • Robert DeLeo のベースが作る独特の粘性

  • Dean DeLeo のねじれたギターリフ

  • Brendan O’Brien のタイトで乾いたミックス

  • Eric Kretz の跳ねるドラム

  • Scott Weiland の “壊れそうで鋭い” ボーカル

“グランジ”という一般的な枠よりも、
STP 独自のダークで美しいロック がここで完成している。


■ Scott Weiland 追悼:その声が持っていた壊れやすく、誠実な輝き

2015年12月、Scott Weiland はツアーバスの中で眠るように逝った。
享年48歳。

Scott Weiland(1967-2015)

薬物依存と闘い続けた人生。
しかし彼は常に、壊れそうな美しさを声に宿していた。

“Vasoline”に刻まれた、
「抜け出せない人生」 という感情は、
彼の人生をそのまま映していたのかもしれない。

だがその痛みは、音楽の中で形を変え、
いまも多くの人の胸を刺し続けている。

Scott の声はこういう曲で本領を発揮する。
強さと弱さが同時に鳴る、世界にただひとつの声だった。

R.I.P. Scott Weiland
あなたの声と痛みは、永遠に「Vasoline」の中で光り続ける。

『Purple』(1994)

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