🎸 おじさんギタリストシリーズ⑯ 身内の前が一番緊張する編
家族の前だと急に“照れる”問題
ライブハウスでは堂々としているおじさんギタリスト。
スポットライトの中でロングトーンを伸ばし、
ハウリングすらも味方につけるその姿は、
誰が見ても立派な“現役ロッカー”だ。
……なのに。
なぜか 家族の前では急に小さくなる。
演奏がじゃなくて、存在そのものが。
あれは全国の家庭で起きている、
謎すぎる現象である。
■① 家族の気配にだけ異常に敏感になる
ふだんはアンプから出る微かなノイズなんて気にしないくせに、
家で弾いていると—
「ん?階段の音した?」
「今、ドア開かなかったか?」
と、獲物を察知した野生動物ばりの聴覚になる。
そのくせ、音楽的なハーモニーは最近怪しい。
■② “アンプの1.5”という謎のボリューム設定
ライブの時はボリューム「5で行こうぜ!」と言っていた男が、
家ではアンプのダイヤルをそっとつまみ、
「1……いや、1.5やな」
妙に細かい。
しかも家族が台所で皿洗ってると、
「今なら音がかき消される!」とばかりにボリュームを“2”に上げる。
皿洗いが終わると、また「1.5」に戻す。
音楽じゃなくて家事にテンポを合わせている。
■③ 家族の前でだけ“表情が昭和の歌番組”化する
不思議なことに、
家族が部屋を横切った瞬間、
なぜか顔の筋肉が緊張しはじめる。
口角が中途半端に上がって、
視線が泳ぎ、
どこか昭和の歌番組の歌手みたいになる。
家族:「……何その顔?」
おじさん:「そう見える?」
家族:「見える(確信)」
■④ ソロの途中で家族が通るとテンションが急落
ライブでは絶対に折れない集中力も、
家庭内では容赦なく崩壊する。
ソロの途中で誰かが通ると──
右手のピッキングが弱くなる。
左手がコードミスをする。
なぜかボリュームを弱める。
家族の足音は、ギタリストの精神にクリティカルヒットする。
■⑤ 家族からの“たった一言”で泣くほど嬉しい
そんな緊張してるくせに、
家族からの一言には弱い。
「今日の曲、いいじゃん」
「そのフレーズ好きかも」
この一言で
50代のおじさんは
10代の文化祭のステージに戻る。
心の中でガッツポーズを決めながら、
表向きは「まぁ…そう?」とか言ってクールぶる。
でも内心は、
“今日だけはアンプを2.5にしていいかも…”
と思っている。
■⑥ オリジナル曲を聞かれると何故か人生最大の羞恥
ライブで知らない人に聴かれるのは全然平気なのに、
家族に自作曲を聴かれると
なぜか心拍数が上がる。
理由は不明だが
家族は最強の聴取者 だ。
変な歌詞を書いていないか、
コード進行が暗すぎないか、
妙に気になってくる。
おじさんギタリストの羞恥心は、
この瞬間だけ高校生のままだ。
■⑦ それでも家族は一番の応援団
本人は照れてるけど、
家族はいつの間にか
おじさんの音楽をちゃんと聞いていたりする。
「この前の動画、前より上手かったね」
「今日の音、軽やかだったよ」
そんな言葉を言われた日には、
おじさんギタリストは
三日くらいテンションが高い。
照れてるけど嬉しい。
嬉しいけど照れる。
この無限ループは、
ある意味ロックより深い。
■まとめ
おじさんギタリストは
ステージでは堂々としてるのに、
家では普通のお父さん。
でもギターを持った瞬間だけ、
心のどこかに “昔の自分” が蘇る。
そして家族の前で照れながら弾くその姿こそ、
ロックでもあり、
人生でもあり、
なんとも言えない 味 になっていく。
照れながら弾く音も、
きっと家族にはちゃんと届いている。
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