🎶『Better Better Holiday』ヒルビリー・バップス
Better Better Holiday – ヒルビリー・バップス
作詞・作曲・編曲 / ヒルビリーバップス
ヒルビリー・バップスの楽曲を語るとき、どうしても忘れてはいけないのが“青春の軽さ”と“本気の衝動”の両立だ。
彼らは明るくコミカルに見えて、
その裏側で常に“痛み”や“焦り”を抱えたバンドでもあった。
「Better Better Holiday」は、その“表と裏の温度差”が最も自然な形で結晶化した1曲だ。
■ 宮城宗典の“心の情景”がため息まじりににじむ曲
この歌詞の主人公は、恋に振り回される青年だ。
だが、ただの“うんざりソング”ではない。
歌詞を読むと、主人公の“ぼやき”が延々と続く。
テスト休みに友人が配ったスナップ写真がきっかけで、急に距離を詰めてくる女の子。
手作りケーキ、モーニングコール、買い物のお付き合い。
正直ちょっと…いや、かなりうっとうしい。
だが、宮城宗典の詞には、いつも自嘲と優しさが同居する“ふっとした温度”がある。
今回もそうだ。
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「あれま あれまでなつかれ」
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「このざま まいるぜ」
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「今日位 一人にさせといて」
これらの言葉には、腹が立っているというより、
どこか“困っている表情”が浮かぶ。
嫌いなら突っぱねればいい。しかし主人公は、突っぱねられない。
面倒だけど、嫌いになりきれない。
宮城の歌詞には、そんな“若い男の無防備な優しさ”がよく出ている。
宮城宗典が書くキャラクターは、強がって生きているけれど、本当は臆病で繊細だ。
その“人間味”が、この曲のユーモアにも結びついている。
■ 「うんざり」「げんなり」――でも、捨てきれない情の描写
サビで繰り返される「もううんざりだ」「もうげんなりだ」。
これは怒りではなく、甘えに近い弱音だ。
完全に拒絶してしまうほど強くない。
だけど振り回されると疲れる。
人間関係の揺れというのは、案外こういう“半端な気持ち”でできている。
宮城宗典の歌詞は、そうした“曖昧な心の揺れ”を見逃さない。
この曲の主人公は、恋に真っ直ぐぶつかれない。
しかし、逃げることもできない。
この微妙な温度こそ、ヒルビリー・バップスの“青春の匂い”そのものだ。
■ ギターは跳ね、ベースは踊る──都会的ロカビリーの快感
ヒルビリー・バップスが持つ“ロカビリーの皮を被った都会的グルーヴ”は、この曲でも鮮やかだ。
・ ギター:ロカビリーではなく“NEOロカ × 80sダンスロック”の切れ味
平野哲也のギターは、見た目こそロカビリーの文脈を持っているが、
この曲のギターワークは 純ロカではなく、80年代後半のダンスロックの質感に近い。
特に特徴的なのは、
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16分の軽いカッティング主体(ジャカジャカではなく、非常にタイト)
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アップストローク強め
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ミッド中心のキレの良いコードワーク
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オープン弦を混ぜずにクリアに区切る“ポップな刻み”
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要所に短いスライドでアクセント(ロカビリーではなく80sニューウェイブ的)
つまり、
ロカビリーの土臭さ → 最低限だけ残し、
1980年代J-POPの明るさとスピード感の方が前に出ている。
トリオ編成のような削ぎ落としではなく、
“跳ねるリズムに合わせて疾走するポップロックギター”が正しい捉え方。
ロカビリーの皮を被りつつも、
当時のJロックの都会性で磨き上げたギター と言える。
・ ベース:ウォーキングとピチカートが混ざる“軽量ロカ”の走り方
川上剛のベースは ウッドベースのピチカート(指弾き) を基本にしながら、
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完全なロカビリーの「ドコドコのウォーキング」ではなく
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8ビートを主体にしたランニング系
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フィルは軽い跳ね方で、主旋律に寄り添う
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深いスラップはほぼ使わず、音像は締まっている
という、非常に独特な“ロカ × ポップス”の混合ライン。
特にAメロでは、
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前へ転がるランニング+少しだけウォーキングの名残
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コーラスでは跳ねる8ビートに切り替え、曲全体が明るく転がる
ここが「ヒルビリーらしさ」。
ウッドベースの温かさがあるのに、
クラシックなロカの野太さではなく 軽やかでポップ。
この曲のベースは “踊るスラップ” ではなく、
都会的に駆け抜けるロカビリー・ランニングライン
■ ユーモアの裏にある“人間の息づかい”
この曲の魅力は、何よりもユーモアの質だ。
ギャグでもコミックソングでもない。
もっと日常に近い、
「好きだけど扱いきれない」
という“気まずい笑い”。
宮城宗典の歌詞は、
喜劇と悲哀の境界線をずっと歩いている。
バックスの声がその曖昧さを絶妙にすくい上げ、
バンド全体が軽快にそれを支えている。
だからこそ、
聴いていて胸がスッと軽くなる。
昔の恋や日常の小さな苛立ちを、ちょっと優しく思い出せる。
ヒルビリー・バップスの楽曲が時代を超えて愛される理由は、この“温度”にある。
■ 青春の後味
この曲には、大事件は何も起きない。
恋が実るわけでも、壊れるわけでもない。
でも、聴き終えた後に残るのは、
不思議と甘くて懐かしい“青春の後味”だ。
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文句を言いながらも放っておけない心
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逃げたいのに逃げきれない情
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面倒なのにどこか嬉しい関係性
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そして、それらを乗せて軽やかに走るロカビリーのグルーヴ
ヒルビリー・バップスは、こういう“人間のリアル”を音にする天才だった。
「Better Better Holiday」は、
彼らの持つ軽さ・情・音楽性・ユーモアすべてが
ごく自然な形で溶け合った、
ファンにとって特別な一曲である。

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