― 体力より先に、気力が尽きるようになった話 ―
最近、気づいたことがある。
3曲で、だいたい終わる。
スタジオに入る。
アンプの電源を入れて、軽くチューニングして、
「じゃあ、いきますか」と音を出す。
1曲目。
まだ大丈夫だ。
指もなんとか動くし、リズムもついていける。
少し余裕すらある。
「今日は調子いいかも」と思う。
だいたいここで油断する。
2曲目。
ちょっと呼吸が浅くなる。
コードチェンジが、ほんの少し遅れる。
ピッキングが、気持ちバラつく。
でも、まだいける。
この辺りで、頭の中に一瞬よぎる。
「……あと何曲やるんだっけ?」
そして3曲目。
ここでくる。
急にくる。
さっきまで普通だったのに、
いきなり“残量警告”みたいなものが出る。
指が重い。
集中力が散る。
リズムの中に入りきれない。
あれ、さっきまで弾けてたよな。
曲が終わる。
静かに、誰かが言う。
「もう1回いく?」
一瞬、空気が止まる。
誰も否定しない。
でも、誰もすぐには弾かない。
おじさんギタリスト、ここで水を飲む。
やたら丁寧に飲む。
時間を稼いでいるのは、だいたいバレている。
若い頃は違った。
3曲なんて、ウォーミングアップだった。
5曲、6曲、平気で続けて、
「まだいけるでしょ」とか言っていた。
今それを言われたら、
たぶん軽く目をそらす。
でも不思議と、悪い感じはしない。
3曲でちゃんと終わるから、
1曲ごとの集中が少しだけ深くなった気もする。
無駄に力まない。
出せる分だけ出す。
それでいいか、と思えるようになった。
昔は「どこまでやれるか」だった。
今は「どこまで丁寧にやれるか」。
基準が、少し変わった。
スタジオの帰り道、ふと思う。
「今日、3曲しかやってないな」
でも、その3曲はちゃんと残っている。
指の感覚も、音の余韻も、
なんとなく体に残っている。
おじさんギタリスト、
今日も3曲でしっかり燃え尽きました。
アンコールは、また次回ということで。 🎸
