🎸おじさんギタリストシリーズ㊿ 三度の勘違いと、夜のテレビの音

■ 偏った耳で、世界を聴いていた 

Crowded House を中心に、好きな曲だけを、
しつこく聴いていた時期がある。

Don’t Dream It’s Over も、
Something So Strong も、
最初から「すごいいい曲だな」だった。

でも、気づいたら少しずつ分解して聴くようになっていた。

サビで、なぜあんなに抜けるのか。
ギターは鳴ってるのに、邪魔をしないのはなぜか。

そのあたりを、ずっと考えていた。

結局、行き着くのは“三度”だった。

長三度なのか、短三度なのか。
それだけで、曲の表情が決まる。

三度で“方向”は決まるけど、実際に心地よく聴こえるかどうかは、その三度をどう“見せるか”だった。

ただ実際の現場では、そんなに単純じゃない。

メジャーコードの中に、あえて三度を弱く入れたり、
susで一瞬ぼかしたり、
add9で輪郭をにじませたりする。

ギターで言うと、全部の弦を鳴らさない。

3弦と2弦だけ残して、あとはミュートする。

それだけで、コードの“性格”が少し曖昧になる。

明るいとも暗いとも言い切れない場所に置ける。

夜のコンビニの照明みたいなもので、
明るいんだけど、どこか眠い。

…当時の自分は、その曖昧さにやたら憧れていた。


■ MTVと、情報の洪水の手前

ベストヒットUSA と MTV。

あの頃の音楽との出会いは、ほとんどここだった。

海外CDは当時、池袋の西武の前の明治通りの向かいにあった“WAVE池袋”で手に入れていた。

マッシュルームレコードのCDがお気に入りで、あの棚の前で、ずいぶん長い時間を過ごした気がする。

そして、音楽高校の文化祭の体育館で流れていた、あの大音量。

スピーカーが少し割れていて、ハイが痛いのに、なぜか気持ちいい。

Loverboy – Notorious
Whitesnake – Here I Go Again
Foreigner – Say You Will

あとから同じ曲を家で聴いても、あの感じにはならない。

音量じゃなくて、空気ごと鳴っていたんだと思う。

すごいいい曲だな
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■ ガチ洋楽勢、でも半分は借り物

自分はどちらかと言うと洋楽寄りだった。

でも、邦楽もちゃんと通っている。

BOØWY、ZIGGY、JUN SKY WALKER(S)、BUCK-TICK。

高校のバンドは、そのままこの辺り。

父親の影響でアリス、キャロル、ザ・タイガース。

それと、近所にいた宮城くんの影響でヒルビリー・バップス。

人の好みって、だいたい借り物から始まる。

それを自分のものだと勘違いするところから、
ようやく音が手に馴染む。


■ 三度を、ちゃんと触るようになる

スタジオに入るようになって、三度の扱いが少し変わった。

Cコードひとつでも、

Eをはっきり鳴らすと、一気に“晴れ”になる。

でもそのEを弱くすると、同じコードなのに、急に曇る。

さらに、Eを抜いてsus4的にすると、どっちにも転べる状態になる。

この“決めない感じ”が、曲の余白になる。

指板の上では、たった1フレットの差。

でも、空気はまったく別物になる。

古いエアコンの温度を1度いじったときの、あの微妙な違和感に似てる。

…正直、最初は全部同じに聴こえてたけどね。


■ 勘違いのまま、しばらく生きてた

あれは、夜の終わりの匂いがした。

テレビからは、Alison Moyet の Is This Love? が、静かに流れていた。

彼女の声って、少し低くて、でもやさしくて、
テレビの光と妙に合っていた。

あの時間帯の、ちょっとだけ現実に戻される感じ。

そのBGMにかぶさるように、
次回のミュージシャン紹介で流れてきたのが
Bruce Hornsby and the Range

ピアノが印象的で、少し都会的で、でも土の匂いもあって。

「ああ、この曲( Is This Love? )もこの人たちなんだな」
って、ごく自然に思い込んだ。

いや、確認しろよって話なんだけど。笑

当時は今みたいにすぐ調べられないし、
なにより“雰囲気で納得する癖”があった。


■ 違和感は、あった

あとから思えば、声、違うんだよね。

でも当時の自分は
「海外のアーティストってこういう幅あるんだな」って、妙に納得してた。

スーパーで流れてるBGMが、昨日と同じ曲なのか違う曲なのか分からない、あの感じに近い。

ちゃんと聴いてないのに、分かった気になってる。

20代の前半、スタジオで誰かが「これ、Alison Moyetだよ」って言って、

「え?」ってなった。

あの瞬間の、自分の中で“音のラベルが貼り替わる感じ”。

ちょっと恥ずかしかったな。

…まあ、そのあと平気な顔してコードだけ弾いてたけど。笑

後年、Grateful Deadのサポートピアニストとして
ホーンズビーを知っていたのに…
申し訳ないと心底思ってる。笑 


■ でも、その勘違いは無駄じゃなかった

不思議なもので、その“混ざった記憶”のおかげで、

声の質感
ピアノの温度
曲の空気

を、分けて聴く癖がついた気がする。

あとになって、

「あ、これは長三度の明るさだな」とか
「あ、この短三度の湿り気があの頃の感じだ」とか、

ちゃんと“分離して聴ける”ようになった。


正直に言うと、今でもたまに、曲名とアーティスト、
うろ覚えのまま、インプットされて話してるときがある。笑

たぶん、またどこかで誰かに訂正されるんだろうな。

でもまあ、そういう曖昧さごと、
音楽って持ってていいのかもしれない。

スタジオで、誰もいない時間にギターを鳴らすと、
たまにあの頃のテレビの音が混ざる。

次の曲が、もう決まってる感じ。

…だいたい違う曲、弾いてるんだけどね。笑 🎸

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