🎵『音の響き』 アリス (1976)

Artist: アリス
Words:矢沢透
Music: 堀内孝雄
Albums:ALICE V +3(1976)


■ これは「歌」だけど、実は「風景」だ

この曲を久しぶりに聴くと、
音より先に、景色が立ち上がってくる。

白い雲。
痛いほどの青空。
昼の熱気の中で、息をひそめて光るものたち。

メロディがどうこう、
コード進行がどうこう、
そういう話を始める前に、
もう心が連れていかれてしまう。

おじさんギタリストとして正直に言うと、
この曲は
「うまい」とか「名曲」とか、
そういう言葉を置く前に
情景を思い描いて、黙らされるタイプだ。


■ 子供の声と、白いジャリ道

子供たちの遊ぶ声
遠く空にこだまする

この一節、
派手でもないし、
ドラマチックでもない。

でも、
確実に“あの頃”を呼び起こす。

白く光るジャリの道。
肩を並べて歩いた帰り道。
夢を語るというより、
夢が当たり前にそこにあった時間。

通い慣れた通学路が、
大人になると
やけに狭く見える。

あれは道が変わったんじゃない。
自分の歩幅が変わっただけだ。


■ 誰もいない校舎の描写が、静かに残酷だ

誰もいない校舎は
二度と旅をすることのない
老いた人の背中のように

この比喩、
若い頃はあまり深く感じなかった。

今は、
分かりすぎて困る。

動かない建物なのに、
「老い」を感じさせる。

何も言わず、
ただそこに在り続ける存在。

ギターを弾かない日が増えた時期、
部屋の隅に置いたケースを見て、
似たような気持ちになったことがある。

……ちょっと恥ずかしい話だけど。


■ 「はなればなれになった友よ」という問い

この曲は、
過去を懐かしむだけで終わらない。

はなればなれになった友よ
どこで悩み傷ついているの

ここで、
時間は“今”に戻ってくる。

あの頃の友は、
今どこで、
どんな顔をしているのか。

夢を追い続けているのか。
それとも、それを置いて、
違う道を住んでいるのか。

答えは出ない。
出さない。

ただ、
問いかける。

矢沢透の詞は、ここで止まる。

断言しない。
救わない。
でも、目を逸らさない。


■ おじさんギタリストとして、この曲をどう聴くか

この曲に、
派手なギターはいらない。

むしろ、
音を鳴らさない時間
一番雄弁だ。

コードをじゃらっと鳴らすより、
一音一音を置いていく気持ち。

音の“響き”とは、
鳴っている部分より
鳴り終わったあとに残るもの。

そういうことを、
この曲は教えてくる。

いや、
教えるというより、
勝手に気づかせてくる。


■ まとめないけど、これだけは

「音の響き」は、
青春の歌でもあり、
別れの歌でもあり、
今を生きている人への
静かな問いかけでもある。

聴き終わったあと、
少し黙ってしまう。

そして、
理由はうまく説明できない。

おじさんギタリストとしては、
それで十分だと思っている。

いい曲って、
だいたいそんな顔をしている。

ALICE V +3(1976)

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