🎸おじさんギタリストシリーズ⑭ 体調がサウンドを左右する編
おじさんギタリスト、ギター以外に気を使うことが増えすぎる問題。
若い頃は、どんなコンディションでもギターを担げばスイッチが入り、
“勢いだけでどうにかなる”という謎の自信があった。
徹夜明けでも、熱があっても、
ライブハウスの湿気で空気が重くても、
「弾いちまえばなんとかなる」と信じていたし、
実際なんとかなっていた(ように感じていた)。
──だが、50代になると話は違う。
もはや 体調そのものがエフェクター である。
しかもスイッチは勝手に入ったり切れたりする、扱いづらいタイプ。
■ 朝のコンディションで“ピッキングの角度”が変わる
まず、朝起きた瞬間に「あ、今日は重い…」と感じる日は、
右手の振り抜きが5度くらい鈍くなる。
ピッキングの角度なんて若い頃は気にしたこともなかったが、
今になると 0.5mmのズレで音色が変わる。
しかも本人は無意識。
この無意識さがやっかいで、アンプのEQをいじっても解決しない。
「あれ、今日の音…なんか丸い?」
「ん? なんでこんなにアタック弱い?」
答えは簡単。
おじさんの肩がちょっとコリ気味なだけ。
そんな理由で音が変わるなんて、若い頃は絶対に想像できなかった。
■ 気圧でテンションが変わる。弦じゃなくて“おじさん本人”が。
台風の日、湿気の多い日、気圧が下がり気味の日…。
以前は「ギターが湿気で太ったな」ぐらいの話だったのに、
今はなぜか 本人のテンションのほうが先に下がる。
結果として、音にもドンピシャで現れる。
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立って弾くと身体が沈む
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ソロで“抜ける瞬間”が来ない
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リズムに乗り切れず微妙に後ろにずれる
弦は変えてもテンションは戻らない。
なぜなら変えるべきは弦ではなく おじさんの気圧 だからだ。
■ コーヒー一杯で音が変わる
コーヒーの量でも音が変わりはじめるのが50代。
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カフェイン摂りすぎ → ピッキングが急に暴れる
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コーヒー足りない → 眠気で左手がモタつく
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午後のコーヒー → なぜかハイが明るい
若い頃なら“気のせい”で済ませていたことが、
今はもう“音の理由”として無視できない。
自分の体のデータが、
デジタルエフェクターより複雑になっている。
■ スタジオに行く前から勝負が決まっている
50代になると、スタジオに入ってから調整するのでは遅い。
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前日の睡眠
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当日の食事
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ちょっとしたストレッチ
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天気
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頭痛の有無
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腰の調子
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水分量
このあたりでほとんど音の方向性が決まる。
つまり、
体調はおじさんギタリストのプリプロ なのだ。
■ 若手からすると“謎のこだわり”に見える
若いスタジオミュージシャンと一緒になると、
こっちは普通に最善を尽くしてるだけなのに、
彼らから見るとこうらしい。
「このおじさん、今日湿度聞いてきたぞ」
「なんか、指先の脂のノリを確認してる…」
「ストレッチしてから弾くの、プロっぽくて逆にカッコいい」
いや、プロっぽいんじゃない。
プロじゃないと壊れるだけ。
■ 結論:体調の変化も“味”になる
50代のギタリストは、
体調によって音が変わるという厄介さを抱えながら、
それでもギターを弾く。
そして、その日の音は
その日の自分にしか出せない。
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キレの良い日もあれば、
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丸く優しい音の日もあり、
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少しだけ湿ったダークな日もある。
全部ひっくるめて「今の音」。
体調がサウンドを左右するのは、
劣化ではなく 味の変化 だ。
その味を面白がれるようになったとき、
おじさんギタリストの音はまた一段深まる。
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