🎵『Dear Friend』 HILLBILLY BOPS (1988)

Dear Friend – HILLBILLY BOPS

(宮城宗典 ver & 小西竜太郎 ver)

作詞:宮城宗典
作曲:宮城宗典
編曲:HILLBILLY BOPS

「Dear Friend」は、ヒルビリー・バップスの作品の中でも特別な位置にある曲だ。
激しいロカビリーの疾走感でもなく、派手なロックの破裂音でもない。
ここにあるのはただ、
“友を想う気持ち”のまっすぐな温度だけ。

そしてこの曲には、
二つの歌声によってまったく違う命が宿っている。
ひとつは宮城宗典が歌うスタジオテイク(Demo)、
もうひとつは小西竜太郎が歌うアルバム版。

歌い手が変わるだけで、
こんなにも物語が変わる曲は珍しい。
それはヒルビリー・バップスというバンドの懐の深さであり、
宮城宗典が遺した言葉の強さでもある。


■ 宮城宗典 ver – 優しさの中にある“寄り添う痛み”

宮城宗典が歌う「Dear Friend」は、
聴く人の心にそっと寄り添うような、やわらかな痛みを持っている。

ロカビリーを歌うときの快活さではなく、
ここでは彼の声の奥に潜む “揺れる弱さと静かな強さ” が前に出てくる。

声を荒げない。
決して押しつけない。
ただ、相手が息を整えるのを待ちながら
「目を開けてほしい」 と願うような温度。

宮城の歌う「Dear Friend」は、
まるで深夜の静かな部屋の隅で、
友にそっと毛布をかけるような優しさに満ちている。

彼が書いた詞そのものが、
“誰かの弱さを受け止める場所”のような働きをしている。
スタジオテイクには、
宮城宗典という人の“やさしさの本質” がそのまま息づいている。

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■ 小西竜太郎 ver – 再生の祈りと、宮城への哀悼が宿る歌

一方、アルバム版で歌う小西竜太郎の「Dear Friend」は、
宮城のものとは違う孤独と、違うあたたかさをまとっている。

竜太郎の声には、
“前へ進ませようとする力”がある。
しかし今回は、それだけではない。

特に
“Wake up little my friend”
の部分は、まるで
この世を去った宮城宗典へ、
「まだ一緒に行こうぜ」
と静かに呼びかけている

ように聴こえる瞬間がある。

歌う時期と背景を知るファンほど、
そのニュアンスに胸をつかれるだろう。

竜太郎はただ歌っているのではない。
宮城が書いた言葉を、もう一度この世界に響かせようとしている。
仲間の言葉を無駄にしないために。
仲間の優しさを、この曲に残すために。

その想いが、歌声の奥底にひっそりと灯っている。

竜太郎版の「Dear Friend」は、
再生へ向かう歌でありながら、
同時に 宮城宗典への静かな哀悼 でもある。

その二つが矛盾せずに同居しているところに、
ヒルビリー・バップスというバンドの絆が滲む。


■ 同じ曲が、二つの心で息をする奇跡

宮城版は、
弱さを肯定し、そっと寄り添う歌。

竜太郎版は、
前を向かせる力と、仲間への想いが宿る歌。

どちらも「Dear Friend」という曲の大切な半分であり、
どちらか一方だけでは完成しない。

二人の声があることで、
「Dear Friend」は“人を受け止める優しさ”と
“前に進ませる強さ”を併せ持つ楽曲となった。

こんな作品を残したバンドは、
本当に稀だ。


■ 『Dear Friend』 は、すべての“誰かを想う人”の歌

「Dear Friend」は、
何かを失った人にも、
立ち止まってしまった人にも、
誰かの背中を押したい人にも、
静かに寄り添ってくれる。

宮城宗典の声が“心の痛み”を映し、
小西竜太郎の声が“前に進む勇気”を照らす。

その両方があるからこそ、
この曲は時を越えて、
多くの人の胸にそっと残り続ける。

これは、友への歌であり、
仲間への歌であり、
そして生き残った者が紡いだ祈りの歌だ。

『30th Anniversary COMPLETE BEST』(2016年7月20日)
『HILLBILLY BOPS』 (1988年9月1日、ベスト・アルバム)

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