楽曲クレジット
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曲名: December
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アーティスト: Collective Soul
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発表: 1995年
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作詞・作曲: Ed Roland
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収録アルバム: 『Collective Soul』(1995年)
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Producer: Ed Roland / Matt Serletic
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Label: Atlantic Records
約束が、裏切りに変わるまで
1995年のアメリカンロックには、今聴いても妙に身体が覚えている音がある。
ギターの歪み方だったり、スネアの乾いた響きだったり、
少し鼻にかかったヴォーカルだったり。
Collective Soulの『December』も、そんな曲のひとつだ。
久しぶりに聴くと、イントロのギターが鳴ったところで、
ああ、この感じだったなと思う。
決して派手な始まり方ではない。
むしろ、同じ場所をぐるぐる歩いているようなフレーズだ。
それなのに、聴いているうちに妙な居心地の悪さが生まれてくる。
若い頃は、その居心地の悪さも含めて格好いいと思っていた。
今は少し違う。
この曲でEd Rolandが何に腹を立てていたのか。
なぜ、こんなに突き放すような言葉を繰り返したのか。
その背景を知ってから聴くと、あのギターの反復さえ、
別のものに聞こえてくる。
失恋の歌だと思っていたら、違った
『December』は、Collective Soulが1995年に発表したセカンドアルバム
『Collective Soul』に収録された曲だ。
作詞・作曲はEd Roland。
プロデュースはEd RolandとMatt Serleticが担当している。
前作からの『Shine』の成功によって、
彼らは一気に注目される存在になった。
ただ、成功したからといって、すべてが順調だったわけではない。
Edは後年のインタビューで、『December』が初期のマネージャーとの関係悪化から生まれたことを明かしている。
バンドとしての体制が整うより先にヒットが生まれ、
周囲の状況が急速に変わっていった。
その中でEdは、自分が利用されているように感じ、
何をしても十分だと認めてもらえない苦しさを抱えていたという。
つまり、この曲の怒りは、恋人に振られた男のそれとは限らない。
信頼していた相手との関係が、
いつの間にか自分を消耗させるものになっていた。
そこが出発点だった。
そう知ると、歌詞に出てくる「あなた」と「私」の距離が、ずいぶん違って見えてくる。
恋愛の歌として聴くこともできる。
けれど、仕事仲間でも、友人でも、家族でも、こういう関係は起こり得る。
大切にしていた相手から、少しずつ自分が削られていく。
その嫌な感じを、私はこの曲から受け取る。
差し出した手から、なぜ水を飲むのか
Why drink the water from my hand?
どうして、わざわざ僕の手から水を飲もうとするんだ
Contagious as you think I am
僕のことを、触れれば何かがうつるような人間だと思っているくせに
Just tilt my sun towards your domain
僕の太陽まで、自分のいる方へ向けさせて
Your cup runneth over again
そうして、君の杯だけがまた満たされていく
冒頭から、なかなか厄介な言葉が並ぶ。
特に引っかかるのが、最初の二行だ。
相手は自分を危険なもの、近づきたくないもののように扱っている。
それなのに、自分が差し出す水は飲もうとする。
都合がいい話である。
必要なときだけ近づいてきて、必要がなくなれば距離を置く。
人間関係で、こういうことは案外ある。
三行目の my sun も面白い。
太陽は、自分にとっての光や活力、大切にしているものとして読める。
それを相手の領域へ向けるというのは、
自分の持っている明るさまで相手のために使わされるような感覚だろうか。
そして Your cup runneth over。
これは聖書にも由来する、杯があふれるほど満たされるという言い回しだ。
普通なら豊かさや祝福を感じさせる言葉なのに、ここでは妙に嫌味に聞こえる。
相手の杯は満ちていく。
では、その水を差し出している側はどうなのか。
歌詞には書かれていない。
でも、そこが気になる。
誰かのために頑張っているうちに、自分の方が空っぽになってしまうことがある。
若い頃は、頼られることを必要とされている証拠だと思っていた。
今は、頼られることと、大切にされることは、必ずしも同じではないと思う。
「もう僕を吐き出してくれ」という言葉
Don't scream about, don't think aloud
大声で騒がなくていい。思っていることを、わざわざ口にしなくてもいい
Turn your head, now baby, just spit me out
もう顔を背けてくれ。そして僕を、用済みのものみたいに吐き捨てればいい
Don't worry 'bout, don't speak of doubt
心配するふりも、疑っていることを言い訳にするのも、もういらない
Turn your head, now baby, just spit me out
さあ、顔を背けてくれ。もう僕を、君の中から追い出してくれ
Spit me out。
この曲で、いちばん耳に残る言葉だと思う。
直訳すれば「僕を吐き出せ」。
けれど、ただ別れを告げてほしいという意味ではない気がする。
一度は相手に受け入れられた。必要とされた。もしかしたら、
自分にも居場所があると思っていた。
それが今では、口に入れたものを不快そうに吐き捨てるような扱いになっている。
しかもEdは、相手に向かってそれを命令する。
ここが少し切ない。
本当は、自分から離れればいい。
でも、簡単には離れられない関係だったのかもしれない。
だから、もうそっちから終わらせてくれ、と言っているようにも聞こえる。
怒っているようで、実はずいぶん疲れている。
Edの歌い方にも、私はそんな印象を持つ。
叫び続けるのではなく、同じ言葉を繰り返す。
何度言っても伝わらない相手に、もう説明する気力がなくなった人の声にも聞こえる。
高い場所まで追いかけてきたのは、誰なのか
Why follow me to higher ground?
どうして、僕が少しでも上へ行こうとすると、そこまで追ってくるんだ
Lost as you swear I am
僕は道を見失っていると、君はあれほど決めつけているのに
Don't throw away your basic needs
自分に必要なものまで、手放すことはないさ
Ambiance and vanity
見栄えのいい空気と、君自身の虚栄心をね
ここも、かなり皮肉が効いている。
Higher ground は、文字どおりなら高い場所だ。
けれど、この曲では、自分が今いる場所から抜け出そうとすること、あるいは少しでもまともな場所へ進もうとすることのように感じる。
相手は「お前は道を見失っている」と決めつける。
なのに、その相手が進もうとすると、なぜか追いかけてくる。
放っておいてくれればいいのに。
人を低く評価しながら、その人が持っているものは手放したくない。
そんな矛盾が見える。
そして最後の Ambiance and vanity。
私はここを、かなり意地悪な言葉として読みたい。
相手にとって大切なのは、本当の信頼関係ではなく、見た目の雰囲気や、自分が立派に見えることなのではないか。
そういう疑いだ。
もちろん、Edが具体的にどんな出来事を指してこの一行を書いたのかまでは分からない。
ただ、初期マネージャーとの関係が背景にあったという本人の説明を踏まえると、単なる抽象的な悪口ではなく、かなり実感のこもった言葉だったのだろうと思う。
同じコードが続く理由
この曲の面白さは、歌詞だけではない。
ギタリストとして聴くと、むしろ演奏の作り方に強く引っかかる。
『December』は、基本となるコード進行を繰り返しながら、そこに異なるメロディを重ねていく曲だ。
Ed Rolandは後年、当時聴いていたXTCの楽曲から、同じ進行の上でメロディを発展させる発想に刺激を受けたと話している。
最初にバンドへ曲を聴かせたときは、その繰り返しがあまりに単調で、メンバーから不評だったという話まで残っている。
少し笑ってしまう。
作った本人には、完成したときの音が頭の中で鳴っている。
でも、周囲にはまだ同じコードを延々と弾いているようにしか聞こえない。
アレンジをしていると、こういうことはある。
「いや、ここから重なるんだって」
と説明したくなるのだけれど、実際に音を重ねてみせないと、なかなか伝わらない。笑
ただ、完成した『December』を聴くと、Edが何をやりたかったのかはよく分かる。
ギターは同じ場所を歩き続ける。
その上で、歌の表情が変わる。別の旋律が入る。音が少しずつ増えていく。
足元は変わらないのに、頭の中だけが騒がしくなっていくような感じだ。
この曲の歌詞にある、同じ怒りや不信感から抜け出せない状態とも、不思議によく合っている。
特に後半は、ひとつの感情が終わる前に、別の感情が重なってくる。
私はそこが好きだ。
ギターが何本鳴っているかを数えるより、どの音をどこに置いたから、この圧迫感が生まれたのかを聴きたくなる。
弾きすぎないことも、立派なアレンジなのだと思う。
Decemberは、ただの十二月ではない
December promise you gave unto me
あの十二月、君が僕にくれた約束
December whispers of treachery
その十二月は、裏切りの気配をささやき始めた
December clouds are now covering me
今では十二月の重い雲が、僕の上を覆っている
December songs no longer I sing
あの十二月の歌を、僕はもう歌わない
ここで曲名の『December』が、ようやく大きな意味を持ち始める。
十二月。
年の終わりであり、冬の始まりでもある。
ただし、Edが実際に十二月に裏切られたのか、特定の出来事がその月に起きたのかについては、確認できる本人の説明だけでは断定できない。
だから私は、ここを具体的な日付の記録としては読まない。
むしろ、ある時期を境に、相手との関係が変わってしまったことを表す言葉として受け取りたい。
最初にあるのは promise、約束だ。
それが treachery、裏切りへ変わる。
やがて雲に覆われ、最後には歌さえ歌わなくなる。
この四行には、信頼が失われていく順番があるように思う。
しかも最後の言葉がいい。
「もう君を愛さない」でも、「もう許さない」でもない。
もう、あの歌を歌わない。
音楽を仕事にしている人間として、私はこの表現が妙に引っかかる。
楽しかった頃によく聴いていた曲が、ある出来事のあと、どうしても聴けなくなることがある。
曲には何の罪もない。
演奏している人にも、歌詞を書いた人にも関係のない話だ。
それなのに、あの人と一緒にいたときの空気まで戻ってきてしまう。
だから聴かなくなる。
Edがこの一行にそこまでの意味を込めたかは分からない。
でも、私にはそう聞こえる。
December songs no longer I sing。
「もう歌わない」というのは、忘れたということではない。
覚えているから、歌えないのかもしれない。
約束と裏切りが、同時に鳴り始める
終盤の『December』は、聴くたびに少しぞっとする。
それまで別々に聞こえていた言葉が、重なっていくからだ。
December promise you gave unto me
あの十二月、君が僕にくれた約束
Don't scream about, don't think aloud
もう騒がなくていい。何も言わなくていい
December whispers of treachery
あの十二月から、裏切りは始まっていた
Turn your head, now baby, just spit me out
だからもう、顔を背けて僕を吐き捨ててくれ
約束の記憶と、拒絶の言葉が同時に鳴る。
ここが、この曲のいちばん怖いところかもしれない。
人は、裏切られた瞬間に、それまでの楽しい記憶を全部捨てられるわけではない。
むしろ、相手を信じていた頃のことほど、妙にはっきり覚えている。
「あのとき、あんなことを言っていたじゃないか」
そう思いながら、もう相手の言葉を信じられなくなっている。
Edは、異なるメロディを最後に重ねるという音楽的な仕掛けを使った。
その結果、過去の約束と現在の怒りが、同じ場所に居座るような終わり方になった。
私はこれを、単なる盛り上げ方としては聴けない。
人間の頭の中って、案外こういうものだと思う。
忘れたいことと、忘れられないことが、同時に鳴っている。
どちらか一方だけ消せれば楽なのだけれど、そう都合よくはいかない。
十二月が過ぎても、残るもの
『December』を聴いていて思うのは、怒りという感情は、案外長く残るということだ。
若い頃は、怒ることには勢いが必要だと思っていた。
声を荒らげたり、相手に言い返したり。
でも歳を重ねると、もっと静かな怒りがあることを知る。
もう何も言わない。
説明もしない。
ただ、その人との距離を少しずつ広げていく。
それは必ずしも許したということではない。
もう、そこに自分の時間を使いたくないだけなのかもしれない。
この曲の Just spit me out も、今の私にはそんな言葉に聞こえる。
相手に向けた強い言葉でありながら、同時に、これ以上自分をすり減らしたくないという願いにも聞こえる。
1995年、Collective Soulはこの曲を大きなヒットにした。
でも、ヒットしたからといって、Edが当時抱えていた嫌な感情まで綺麗に消えたわけではないだろう。
少なくとも、そういう簡単な話ではなかったはずだ。
曲の背景を知った今でも、私はイントロのギターが好きだ。
あの反復が始まると、すぐに1990年代の空気が戻ってくる。
そして、少しずつ重なっていく声を聴きながら思う。
誰かに差し出したものが、必ずしも同じ温度で返ってくるとは限らない。
それでも、差し出したこと自体が間違いだったとは思いたくない。
そんなことを考えているうちに、曲が終わる。
十二月は毎年やってくる。
けれど、もう二度と戻らない十二月もある。
『December』の最後に残るのは、冬の寒さというより、誰かを信じていた頃の、少し遠い自分のような気がする。

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