🎸おじさんギタリストシリーズ ⑦ バンド論編

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🎸おじさんギタリストシリーズ ⑦ バンド論編

エフェクターボードは『視力検査』の場である。

歪む視界と、歪まない信念。

50代おじさんギタリストの「機材と身体」の戦い

Thinkback 80’s

1986年、私の音楽人生はニール・フィンの歌声と共に始まった。手に入れたばかりのCROWDED HOUSEの1stアルバム『Crowded House』。あの瑞々しいメロディと、「Don’t Dream It’s Over」の完璧な構成美。

「俺はこういう渋いメランコリーなポップスを奏でる大人になるんだ」

そう誓ったはずだった。しかし、気がつけば高校時代、私の手には黒いレスポールがあり、アンプからはヒルビリーバップスの「ウェディングベルを抱きしめて」や、ZIGGYの「TOKYO CITY NIGHT」やBOØWYの「Plastic Bomb」、あるいはジュンスカやブルーハーツのパンクサウンドが爆音で鳴り響いていた。あれから30数年。

50代になった今も、私は隔週でスタジオに入っている。編成は3ピース。逃げ場のないこの最小編成で、我々おじさんギタリストが直面している「現実」と「あるある」を、ここで少し吐露させてほしい。


重力、それは最大の敵

(「おじさんギタリストという生き物の話」でも少し触れましたが……)

高校時代、憧れのギタリストが抱えるレスポールは、ロックンロールの象徴だった。重ければ重いほど良い音がすると信じていたし、その重さが誇りだった。

しかし、50代の今。ギターケースを持ち上げた瞬間、地球の重力が強くなったのではないかと本気で疑う。

スタジオに向かう道中、肩に食い込むストラップの痛みは、もはや苦行だ。「今日はフェンダーのストラトにしようか…いや、もっと軽いSGにするか…」と、音色ではなく「グラム単位の軽さ」でその日の相棒を選びそうになる自分がいる。

スタジオに着く頃には、演奏前からすでにHP(ヒットポイント)の2割を持っていかれているのだ。


エフェクターボードは「視力検査」の場

おじさんたち世代にもなると、ある程度お金の自由が利くようになった。若い頃には買えなかった憧れのブティック系エフェクターや、高機能なマルチエフェクターをボードに並べることができる。

機材のスペックは最高だ。だが、ここに大きな落とし穴がある。文字が見えないのだ。

薄暗いスタジオやライブハウスの照明の下、マルチエフェクターの液晶画面に表示される「BPM」や「Delay Time」の小さな数字は、もはや解読不能な古代文字に見える。

「あれ、音が変だぞ?」と思って足元を見ると、ディレイを踏むつもりが隣のリングモジュレーターを踏んでいて、バラードのソロで宇宙人との交信みたいな音を出してしまう。

最近では、足元のチューナーの表示を「ストロボモード」ではなく、一番見やすい「デカ文字モード」に固定するのが、我々の暗黙の了解となっている。

「半音下げ」という名の平和条約

隔週のスタジオ練習は、3ピースバンドにとって至福の時間だ。ZIGGYのロックンロールなリフを刻むとき、一瞬だけ高校生の自分に戻れる。技術的には、昔よりも今のほうが上手い(はずだ)。カッティングのキレも、ミュートの正確さも、経験値がモノを言っている。

しかし、ボーカル(ワタクシ)の喉の耐久値は、明らかに経年劣化を起こしている。

原曲キーで挑むBOØWYの「B・BLUE」。サビの高音部で、ボーカル(ワタクシ)の顔がトマトのように赤くなり、血管が切れそうになるのを感じて、私は静かに提案する。

「……半音、下げていい?」

これは敗北ではない。バンドを長く続けるための、大人の知恵であり「平和条約」だ。ダウンチューニングされたギターの音は、不思議と今の我々の重たい腰回りや、人生の重みにマッチして、なんとなくブルージーでカッコよく響くから不思議だ。


それでも、真空管は温かい

練習後の居酒屋での反省会(という名のただの飲み会)を含めて、我々のバンド活動だ。

「あそこのキメ、走ってたよな」「いや、お前がモタったんだよ」

そんな他愛もない会話をしながら、ジョッキを傾ける。翌日には確実に残る疲れと、指先の痛み。それでも、隔週のスタジオが待ち遠しいのはなぜだろう。

1986年、CROWDED HOUSEを聴いて「音楽っていいな」と思ったあの純粋な気持ちは、形を変えてまだここにある。

レスポールは重い。エフェクターの文字は見えない。翌日は腰が痛い。 それでも、真空管アンプのスイッチを入れて「ジャーン」とコードを鳴らし、空気が震えるあの一瞬。あの一瞬の快感だけは、何歳になっても色褪せないのだ。

さあ、次のスタジオは再来週。 そろそろ、「老眼鏡」をギターケースのポケットに忍ばせておくべきか、真剣に悩み始めている。


ずっと大好きだったCROWDED HOUSE の曲も、もちろん当時からしっかり耳コピして弾いていましたけどね…… 笑

機材と身体
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