🎸おじさんギタリストシリーズ⑱ ギターに家を占領される編
ギター保管スペースが生活を侵食する
ギタリストという生き物は、
「ギターは必要な分だけあればいい」
と言いながら、
その“必要な分”が年齢とともに勝手に増殖していく。
若い頃は壁に一本掛けるだけで満足していた。
それが始まりだった。
あれが、全ての“侵略”の初期段階だった。
■① 最初はただの“壁一枚”だった
部屋の片隅に一本、壁掛けフックを付けた時――
おじさんギタリストは思った。
「うん、これでスタジオっぽい」
それだけで十分だったはずなのに、
次第に壁にもう一本、
スタンドにもう一本、
ケースから出しておく一本が増え……
気づけば言われるようになる。
「ギター屋さんですか?」
いや、違う。
ただの趣味なんだ。
ただ、壁が勝手にギターに魅かれるだけなんだ。
■② 気付けば“部屋半分”がギターゾーン
壁一枚では収まらなくなってくると、
生活スペースにゆっくりと侵入してきたギターたち。
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ベッドを10cmだけ横へずらす
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本棚を別室へ移動
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スツールをどかす
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テーブルの上の物を別の棚に避難
そして最終的にはこうなる。
部屋のメイン利用者:ギターたち
部屋のサブ利用者:おじさん本人
ギターの隙間におじさんが暮らしている。
もうどちらが飼い主か分からない。
■③ ついに“廊下”へと領土拡大
ギターが増えれば当然ケースも増える。
ケースは重い、でかい、場所を食う。
その結果、侵略の次のステップが始まる。
廊下に整列するギターケース。
最初は「一時的に置いとくつもり」だった。
でも“その一時”が気づけば数ヶ月。
いまではこうだ。
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家族の靴:5足
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ギターケース:8本
家の入口で存在感を放つのは靴ではなく、
ギターの軍隊。
家族が言う。
「ねぇ…うちギタリストが何人住んでる設定なん?」
おじさんは答えない。
答えられない。
■④ 家の動線が“ギター中心のマップ”に変わる
いつの間にか家の中の道が、
ギターの配置に合わせて最適化されていく。
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廊下の角 → ケースを避けてイン側を歩く
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トイレへ行く道 → 深夜は“つま先歩き”でケースに触れないよう移動
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掃除機ルート → ギターの間を縫う“スラローム方式”
おじさん自身が家の住人というより、
ギター中心の島に住む原住民 みたいになっていく。
■⑤ 家族の物よりギターのほうが増える
家族が言う。
「ねぇ……これ、また増えてない?」
おじさんはこう言う。
「増えてないよ(増えてる)」
ギターが一本増えると、
必然的にストラップ、ケース、ケーブル、スタンドも増える。
ギターが一匹家に入ると、
ついてくる“付属の小物たち”が
勝手に繁殖するのだ。
■⑥ 手放せない理由が多すぎる
「整理しようよ」と家族に言われても、
おじさんは首を横に振る。
なぜなら、
そこに置いてあるギターはただの楽器ではなく、
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若い頃のバンド時代の記憶
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初めて給料で買ったやつ
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たまたま中古で出会った一本
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色が好きだった
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なんとなく捨てるのが寂しい
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気づいたら愛着が湧いてた
という 人生の“しおり” みたいな存在だから。
手放せるわけがない。
■⑦ そしておじさんは悟る
ギターが増えすぎて生活を圧迫してきた頃、
おじさんギタリストはある境地に辿り着く。
「家を占領しているんじゃない。
ここは最初からギターの家だったんだ。」
家族からすれば意味不明だが、
本人は本気で思っている。
ギターたちが家を侵略したのではなく、
おじさんが“ギターの国”を建国してしまっただけなのだ。
■ まとめ
ギターは気づかないうちに増え、
気づかないうちに家を占領していく。
だがその光景は、
ギタリストにとって誇らしくて、
少しおかしくて、
そしてちょっと幸せでもある。
家族よりギターのほうが多い家。
廊下にケースが並ぶ家。
壁がギターで埋まる家。
その家はきっと、
静かに、そして確実に、
ロックを抱きしめている。
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