🎵『DO NOT』- 藤井フミヤ

DO NOT – 藤井フミヤ(1997)
作詞:藤井フミヤ
作曲:水政創史郎
収録アルバム:『PURE RED』(1997)
レーベル:ポニーキャニオン

『PURE RED』
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■ 1997年という時間の中で生まれた歌

1997年の藤井フミヤは、
すでに「チェッカーズのフミヤ」ではなかった。

1993年の「TRUE LOVE」で国民的ソロアーティストになり、
その後もヒットとツアーを重ね、
“完全に一人で立つ”ことを選び切った時期だった。

同時にそれは、
チェッカーズ解散(1992年)から数年が経ち、
元メンバーとの関係が事実上修復不能になっていった時期でもある。

当時、彼はほとんどチェッカーズ楽曲を歌わず、
過去を振り返ることを避けるように、
前だけを見て進んでいた。

「DO NOT」は、
そんな強さと孤独が同時に存在していた1997年に置かれた、
とても人間的な歌だ。


■ タイトル「DO NOT」が放つ違和感

英語としては、命令文の途中で止まっている。

Do not —— 何を、するなと言っているのか。

この未完の否定が、
そのままこの曲の感情を表している。

拒絶したい。
止めたい。
でも、言葉にしきれない。

この曲は最初から最後まで、
「言い切れなかった想い」の中で揺れている


もちろんラブソングとしての物語として読むのが自然だ。
ただ、この曲を何度も聴き返すうちに、少し違う距離感が見えてくる。

■ 失われる前の関係に向けた祈り

どこまでも連れて行く
そう誓った
見えていた遠くへ続く道

若さの誓い。
未来が一直線に見えていた頃の約束。

恋人同士の言葉としても成立するが、
ここには「共に行けると思っていた相手」への
過去形の信頼がある。


どこまでも付いていく
そう頷いた
その瞳見つめて生きてきた

主従でも依存でもない。
ただ、信じ合っていた時間。

ここで描かれるのは、
裏切りよりも「失われた共有感覚」だ。


激しい雨の中で
乾いた風の中で
泣いた

環境は変わり続けた。
成功の渦中でも、孤独の中でも、
同じように涙は出る。

順風も逆風も、感情は削るという現実。


Don’t let me down
真っ白な二人に戻ろう

「失望させるな」という直訳よりも、
ここでは
“これ以上、壊さないでくれ”
という祈りに近い。

“真っ白”とは、
始まりの純粋さであり、
まだ何も決裂していなかった関係だ。


Don’t say good bye
その涙が僕に
愛の意味を教えてゆく

別れを止めたいのではない。
涙の意味を、まだ信じたい。

ここには
去る者より、残される側の視点がある。


眩しい朝の中で
切ない夜の中で
抱いた

成功の朝と、孤独な夜。
どちらも現実。

1997年の藤井フミヤは、
まさにこの両方を生きていた。


Don’t leave me alone
君のない明日はみえない

この一行だけ、
強がりが完全に崩れる。

自立した男の言葉ではない。
誰かを失うことを、まだ受け入れきれない人間の声だ。


■ この歌が「ラブソング」にも聞こえる理由

「DO NOT」は、
明確な対象を歌詞の中に固定しない。

だから、
恋人の歌にも、
過去の仲間への歌にも、
自分自身への歌にも聞こえる。

1997年の藤井フミヤが、
「もう戻れない関係」を
はっきり言葉にできなかったからこそ、
この曲は聴く側の人生を映す。


■ おじさんギタリストとして

この曲は、
強くなる前の、最後の弱音が封じ込められている。

前に進む覚悟はある。
でも、切り捨てたくない記憶がある。

「DO NOT」は、
別れを肯定しない。
再会も約束しない。

ただ、
失われていく関係を、静かに抱きしめている

歳を重ねてから聴くと、
この曲が一番苦しいのは、
いちばん誠実だった瞬間を
ちゃんと覚えている人間だけだと分かる。

だから今も、
この曲は静かに効き続ける。

言葉にできなかった否定を、
そのままの形で残した、
とても正直な1997年の記録として。

『PURE RED』(1997)

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