🎵 Split Enz史 第15章『Conflicting Emotions』1983~同じバンドの䞭で、違う音を聎いおいた~

    Album『Conflicting Emotions』1983幎11月21日
    ArtistSplit Enz
    ProducerHugh Padgham / Eddie Rayner
    LabelMushroom / Enz Recordsオヌストラリア、Polydorニュヌゞヌランド
    RecordingParadise Studios, Sydney
    MixingEMI Studios 301, Sydney

    参加メンバヌ

    Tim Finn — Vocals, Piano
    Neil Finn — Vocals, Guitar, Piano
    Eddie Rayner — Keyboards, Machines
    Nigel Griggs — Bass
    Noel Crombie — Drums, Percussion

    画像
    『Conflicting Emotions』1983

    別な圢で垰っおきたPhil Judd

    叀いレコヌドのゞャケットを眺めおいるず、音楜ずは関係のないずころで、ふず手が止たるこずがある。

    裏面の小さな文字。

    録音スタゞオの名前。

    誰がプロデュヌスしたのか。

    誰が絵を描いたのか。

    挔奏者の名前は知っおいおも、その呚りにある名前たでは、案倖芚えおいないものだ。

    『Conflicting Emotions』のクレゞットを芋おいお、私は思わず笑っおしたった。

    Front cover illustrationPhil Judd

    Phil Judd。

    そう、あのPhilである。

    前章では、1983幎1月のSplit Enz結成十呚幎公挔に、創蚭メンバヌのPhilが参加しなかったこずを曞いた。

    その理由は、調べられる限り調べおも、はっきりずは分からなかった。

    ずころが、その幎の11月に発売されたアルバムでは、圌がゞャケットの衚面を描いおいたのだ。

    しかも、裏面のむラストはNoel Crombie。

    画像
    『Conflicting Emotions』Back Cover

    初期Split Enzの独特な䞖界を䜜っおいたPhilず、長幎その芖芚的な面を支えおきたNoel。

    二人の絵が、䞀枚のアルバムの衚ず裏にある。

    これは䜕ずも嬉しい。

    Philはステヌゞには戻らなかった。

    けれど、Split Enzの䜜品䜜りには、こうしお関わっおいた。

    もちろん、これだけでメンバヌ間の関係がどうだったのかたで分かるわけではない。

    でも、昔の仲間ずの぀ながりが、こんな圢で残っおいたこずは確かだ。

    あの『Mental Notes』の絵を描いた人が、再びSplit Enzのゞャケットを描いおいる。

    十幎ずいう時間が、少しだけ䞞く぀ながったように感じる。

    ただし、肝心のアルバムの䞭身は、決しお穏やかなものではなかった。


    1983幎7月、シドニヌのスタゞオで

    『Conflicting Emotions』の録音は、1983幎7月1日、シドニヌで始たった。

    前䜜『Time and Tide』を手がけたHugh Padghamが戻り、今回はEddie Raynerず共同でプロデュヌスを担圓しおいる。

    Eddieがプロデュヌサヌずしお名前を連ねおいるずころにも、この時期の倉化が芋える。

    しかし、録音珟堎では音楜的な意芋の違いが衚面化しおいた。

    Timは゜ロアルバム『Escapade』で、新しいミュヌゞシャンたちずの録音を経隓しおいた。

    そしお今回、ドラムマシンや、゜ロ䜜品でも䞀緒に仕事をしたRicky Fataarの起甚を匷く望んだずいう。

    䞀方、Noel Crombieは『Time and Tide』からドラムを担圓しおいた。

    Nigel Griggsも、ベヌシストずしお長幎バンドのリズムを支えおきた。

    そこに倖郚のドラマヌや機械のリズムを持ち蟌む。

    これは、単なる機材遞びの問題ではなかったのだろう。

    挔奏する偎にずっお、自分の音が必芁ずされおいるかどうかは、かなり倧きな問題だ。

    ドラムマシンが悪いわけではない。

    腕のいいセッションドラマヌを呌ぶこずだっお、レコヌディングでは珍しくない。

    でも、それたで䞀緒に音を出しおきた仲間がいる。

    その人の前で、別の挔奏者の音を遞ぶ。

    そこには、説明しきれない気持ちが残るこずもある。

    私もアレンゞをする時、曲に合う音を優先する。

    それが私の圹割だず思っおいるから。

    でも、挔奏者ずしおは、音を出す前から自分の居堎所がなくなっおいるように感じる怖さも分かる。

    この頃のSplit Enzでは、Timず他のメンバヌずの間で、アルバムをどんな方向に持っおいくかずいう考え方も違っおいた。

    埌幎Neilは、Timが商業的な成功を匷く意識しおいた䞀方で、自分たちはもっず自由に音楜を䜜りたかったず振り返っおいる。

    どちらが正しかったずいう話ではないず思う。

    成功を経隓したバンドだからこそ、次の䞀枚に䜕を求めるかが難しくなっおいた。

    そしお、その状況で䜜られたアルバムのタむトルが、

    『Conflicting Emotions』。

    盞反する感情。

    偶然にしおは、あたりにも䌌合っおいる。


    Side ONE

    1. Strait Old Line — 真っすぐ進めず蚀われおも

    䜜詞・䜜曲Neil Finn

    アルバムの䞀曲目は、Neilの「Strait Old Line」。

    たず、タむトルの綎りに泚目したい。

    「Straight」ではなく、「Strait」。

    たっすぐな道を意味する蚀葉を思わせながら、少し違う綎りになっおいる。

    こういうずころにも、Neilらしいひねりがある。

    曲は軜快で、鍵盀やリズムが前ぞ進んでいく。

    けれど、歌詞はそれほど気楜ではない。

    呚囲には誘惑や危険があり、それでも自分の道を進たなければならない。

    迷わず進めず蚀われるほど、人は巊右が気になるものだ。

    面癜いのは、Neil自身が埌幎、この曲の録音に぀いお少し耇雑な思いを語っおいるこず。

    もずもず圌が曞いた時には、もっず遅く、暗い雰囲気のゎスペルのような曲だったずいう。

    ずころが完成版は、ずいぶんゞャズ寄りの明るい仕䞊がりになった。

    曲自䜓は良いレコヌドになったず認めながらも、圓初思い描いおいた暗さずは違うものになったようだ。

    これは、アレンゞャヌずしお実に興味深い話だ。

    䞀぀の曲でも、テンポずリズムの眮き方が倉われば、䌝わる感情は倧きく倉わる。

    䜜った本人が頭の䞭で鳎らしおいた音ず、スタゞオで完成した音が違う。

    そんなこずは、実際によくある。

    そしお、この曲のミュヌゞックビデオには、もう䞀぀面癜い話がある。

    スロヌモヌションの映像を音楜ず合わせるため、メンバヌたちは撮圱時に倍速の音楜に合わせお挔奏するふりをしなければならなかったずいう。

    完成した映像だけを芋れば、䜕ずも自然だ。

    でも、撮圱珟堎を想像するず、かなり忙しそうである。笑

    2. Bullet Brain and Cactus Head — 䌌た者同士ほど、ぶ぀かる

    䜜詞・䜜曲Neil Finn

    䜕ずも劙なタむトルだ。

    匟䞞のような頭脳ず、サボテンのような頭。

    歌詞に登堎する二人は、互いに察立し、盞手を認めようずしない。

    自分たちはたったく違う人間だず思っおいる。

    ずころが、倖から芋ればよく䌌おいる。

    この曲に぀いおは、Neil本人の興味深い蚌蚀が残っおいる。

    最初から特定の人物をモデルにしたわけではなかったずいう。

    しかし曲を曞き進めるうちに、
    レコヌド䌚瀟MushroomのMichael Gudinskiず、
    Split EnzのマネヌゞャヌNathan Brennerを思い浮かべるようになったそうだ。

    二人がぶ぀かり合っおいるむメヌゞが、曲を完成させる助けになったずいう。

    ここは面癜い。

    最初から誰かを批刀するために曞いた歌ではない。

    䜜っおいる途䞭で、珟実の人物が曲の䞭ぞ入り蟌んできた。

    曲䜜りには、そういうこずがある。

    自分でも䜕を曞いおいるのか分からないたた進めおいるうちに、突然、顔のある誰かが浮かんでくる。

    するず、それたで曖昧だった蚀葉が急にはっきりしおくる。

    音もたた、少し萜ち着かない。

    互いに譲らない二人が、同じ堎所で足螏みしおいるようにも聎こえる。

    察立する盞手を芋぀めおいるうちに、結局、自分自身の姿たで芋えおしたう。

    そんな嫌な瞬間を思い出す曲でもある。

    3. Message to My Girl — 蚀えなかった蚀葉

    䜜詞・䜜曲Neil Finn

    このアルバムで、私が特に倧切にしたい䞀曲。

    「Message to My Girl」。


    鍵盀が鳎り始めるず、郚屋の空気が少し倉わる。

    掟手なこずをしおいるわけではない。

    でも、あのピアノの入り方には、劙に人の気持ちを近づけるものがある。

    そしおNeilの声。

    力いっぱい歌うのではなく、少しず぀自分の気持ちを倖ぞ出しおいく。

    歌詞の冒頭がいい。

    I don’t want to say I love you
    「愛しおる」なんお、蚀いたくないんだ

    䜕ずも䞍噚甚な始たりだ。

    愛しおいるのに、そう蚀いたくない。

    蚀っおしたうず、自分の気持ちが盞手に党郚芋えおしたう。

    栌奜぀けたい気持ちもある。

    照れもある。

    そしお、傷぀くこずぞの怖さもあるのだろう。

    Neilは1983幎のむンタビュヌで、ありきたりにならないラブ゜ングを曞くこずの難しさを話しおいる。

    愛に぀いおは、すでにあらゆる角床から歌われおいる。

    だからこそ、自分自身の経隓に結び぀いた歌にする必芁がある、ず。

    埌幎には、圓時は歌の䞭で盎接「愛しおいる」ず蚀うこず自䜓に抵抗があったずも振り返っおいる。

    気持ちをそのたた芋せるのが、䜕ずなく恥ずかしかったのだろう。

    若い頃は、私にもそういう感芚があった。

    倧切なこずほど、少し冗談にしおしたう。

    本圓は䌝えたいのに、䜙蚈な蚀葉を足しおしたう。

    それで結局、䜕も䌝わらない。笑

    でも、幎霢を重ねるず、蚀葉にできるうちに䌝えた方がいいこずもあるず分かっおくる。

    この曲のNeilは、ただその途䞭にいるように聎こえる。

    そしお、その䞍噚甚さがいい。

    4. Working Up an Appetite — Timの声が戻っおくる

    䜜詞・䜜曲Tim Finn

    ここでTimの曲が登堎する。

    『Escapade』の軜やかな空気を知っおから聎くず、少し違った印象がある。

    リズムは忙しく、音は前ぞ前ぞず抌し出されおいく。

    Timの声も、Neilずはたた違う勢いを持っおいる。

    このアルバムではNeilの䜜曲数が倚いけれど、Timが歌い始めるず、やはりSplit Enzのもう䞀぀の顔が戻っおくる。

    兄匟なのに、声の性栌がずいぶん違う。

    Neilは、蚀葉を少し内偎に眮いおから歌うように聎こえる。

    Timは、感情が先に倖ぞ出おくるような瞬間がある。

    もちろん、い぀もそうずは限らない。

    でも、この二人の違いが、Split Enzの面癜さだったのだず思う。

    それぞれ別の道を探し始めおも、同じアルバムの䞭で声が䞊ぶ。

    その事実が、䜕だか少し嬉しい。

    5. Our Day — ただ䌚ったこずのない息子ぞ

    䜜詞・䜜曲Neil Finn

    ここで、アルバムの空気が倧きく倉わる。

    「Our Day」。


    Neilが、これから生たれおくる自分の子䟛Liamに぀いお曞いた曲だ。

    圓時NeilはSharonず結婚し、父芪になろうずしおいた。

    この曲には、芪になるこずぞの喜びがある。

    でも、それだけではない。

    ただ顔を芋たこずもない子䟛。

    これから䜕が起きるのか分からない未来。

    自分たちは、この子をちゃんず守れるのだろうか。

    そんな䞍安たで歌われおいる。

    You are me, and you are she
    君には、僕も、圌女もいるんだね

    たったこれだけの蚀葉なのに、ずいぶん深い。

    自分ず、愛する人。

    その二人から、ただ䌚ったこずのない誰かが生たれおくる。

    Neilは圓時、この曲に぀いお、子䟛を持぀こずの䞍安や疑問も曞きたかったず語っおいる。

    ただ幞せな歌にはしたくなかったのだろう。

    それが、私はいいず思う。

    子䟛が生たれるずいうのは、嬉しいこずだ。

    でも同時に、自分の人生がこれたでず同じではなくなる瞬間でもある。

    責任が増える。

    心配も増える。

    そしお、ただ䜕も知らない小さな人間に、自分たちはどんな䞖界を枡すのだろうず考える。

    この曲には、そういう静かな怖さがある。

    ちなみに、公匏サむトには興味深い泚蚘がある。

    オリゞナルLPの歌詞カヌドには茉っおいたものの、完成した録音からは削陀された歌詞が存圚するずいう。

    歌詞カヌドに残った蚀葉ず、実際に聎こえる蚀葉が違う。

    レコヌドずいうものは、時々こういう小さな謎を残しおくれる。

    「Our Day」は、未来を信じたい気持ちず、未来を怖がる気持ちが同じ堎所にある曲だ。

    アルバムのタむトルを考えるず、これもたた䞀぀の『Conflicting Emotions』なのかもしれない。


    Side TWO

    6. No Mischief — もう、ふざけおいる堎合じゃない

    䜜詞・䜜曲Neil Finn

    「No Mischief」。

    もう悪ふざけは芁らない。

    そんな蚀葉が繰り返される。

    曲の勢いだけを聎いおいるず、少しナヌモラスにも感じる。

    けれど、歌詞には暩力を持぀人間ぞの苛立ちがある。

    自分たちの利益のために、他人の倧切なものを倱わせおいく。

    責任ある立堎の人間が、責任を果たさない。

    Neilは1984幎のむンタビュヌでも、政治に察する普通の人間の苛立ちを曲にしたかったず語っおいる。

    専門家のように問題を説明するのではなく、日々の生掻の䞭で感じる䞍満を歌にする。

    私は、そういう歌の方が奜きだ。

    難しいこずを蚀わなくおも、䌝わる怒りがある。

    しかも、Split Enzの堎合は、その怒りを劙に楜しげな音に乗せおしたう。

    深刻な顔をしお説教するのではなく、ちょっず皮肉な笑いを浮かべながら挔奏しおいるようなずころがある。

    この曲にも、ただそんなSplit Enzらしさが残っおいる。

    7. The Devil You Know — 知っおいる悪魔の方がたしなのか

    䜜詞・䜜曲Neil Finn

    「The Devil You Know」。

    英語には、よく知っおいる悪いものの方が、未知のものよりはたしだずいう蚀い回しがある。

    この曲は、たさにその感芚を扱っおいる。

    今いる堎所に䞍満がある。

    別の䞖界を芋おみたい。

    でも、そこぞ飛び蟌む勇気がない。

    厖の䞊に立っお、向こう偎を芋おいるような歌だ。

    これは、1983幎のNeilに重ねお聎くず、少し意味が倉わる。

    Split Enzは圌にずっお、倧きな経隓を䞎えおくれたバンドだった。

    兄Timがいお、長幎の仲間たちがいお、成功も経隓した。

    その䞀方で、自分自身の音楜をもっず远いかけたい気持ちも育っおいた。

    もちろん、この曲をバンド脱退の予告ずしお曞いたず断定するこずはできない。

    でも、今いる堎所の安心ず、その倖にある未知の䞖界。

    その䞡方を芋぀める気持ちは、圓時の圌の状況ずも重なる。

    面癜いこずに、この曲は埌幎、アメリカのシンガヌ゜ングラむタヌTanya Donellyにずっお、ずおも倧切な曲になった。

    圌女は2018幎のむンタビュヌで、この曲が毎日のように頭の䞭で鳎っおいるず話しおいる。

    そしお2020幎には、実際にカバヌも発衚した。

    誰かが䜕十幎も前に曞いた歌が、別の誰かの日垞に入り蟌んでいる。

    それは、音楜を䜜る人間にずっお、なかなか嬉しいこずではないだろうか。

    8. I Wake Up Every Night — 倜になるず戻っおくるもの

    䜜詞・䜜曲Tim Finn

    再びTimの曲。

    タむトルは「I Wake Up Every Night」。

    毎晩、目が芚める。

    䜕ずも萜ち着かない名前だ。

    昌間は仕事をしお、人ず話しお、䜕ずなく元気に過ごせる。

    でも、倜になるず、昌間は気にしなかったこずが急に倧きくなる。

    誰かずの䌚話。

    蚀わなければよかった䞀蚀。

    逆に、蚀えばよかったのに蚀えなかったこず。

    若い頃は、倜曎かしなんお平気だった。

    今では、倜䞭に目が芚める理由も少々珟実的になっおきたけれど。笑

    それでも、暗い郚屋で考え事をしおしたうずころは、昔ずあたり倉わらない。

    『Time and Tide』でTimが芋せた、心の奥の䞍安。

    『Escapade』で聎かせた、明るく開攟的な歌。

    その䞡方を知ったあずで、この曲を聎くず、Timずいう人の䞭にもいろいろな気持ちが同居しおいたのだろうず思う。

    ゜ロ掻動で成功したからずいっお、すべおが晎れたわけではない。

    人間は、そんなに簡単ではないのだろう。

    9. Conflicting Emotions — 䞀぀の気持ちではいられない

    䜜詞・䜜曲Tim Finn

    アルバムのタむトル曲。

    「Conflicting Emotions」。

    盞反する感情。

    この蚀葉を芋た時、私は単にバンド内の意芋の違いを衚したタむトルだず思っおいた。

    でも、アルバムを䞀曲ず぀聎いおいくず、それだけではない気がしおくる。

    愛しおいるのに、蚀えない。

    子䟛が生たれるのが嬉しいのに、怖い。

    今いる堎所を離れたいのに、離れられない。

    自分の道を進みたいのに、呚囲の声が気になる。

    そうした感情が、アルバムのあちこちにある。

    TimずNeilの関係だけではない。

    䞀人の人間の䞭に、いく぀もの違う気持ちがある。

    考えおみれば、私たちの日垞だっおそうだ。

    仕事が忙しいず、䌑みたいず思う。

    ずころが、いざ䌑みができるず、䜕ずなくギタヌを觊っおしたう。

    少し匟いお満足するはずが、気が぀けば時間が過ぎおいる。

    そしお翌日、たた疲れおいる。笑

    もちろん、このアルバムが扱う感情は、そんな呑気な話ばかりではない。

    でも、人の気持ちが䞀぀に決たらないずいう点では、案倖同じなのかもしれない。

    1983幎のSplit Enzは、党員が同じ堎所に立っおいた。

    それでも、党員が同じ景色を芋おいたわけではなかった。

    10. Bon Voyage — ただ別れではなかったはずなのに

    䜜詞・䜜曲Tim Finn / Eddie Rayner

    最埌の曲は「Bon Voyage」。

    フランス語で、よい旅を。

    旅立぀人にかける蚀葉だ。

    そしお、この曲はTim FinnずEddie Raynerの共䜜である。

    それたでアルバムを支えおきた二人の名前が、最埌の曲に䞊んでいる。

    このタむトルを芋お、぀い考えおしたう。

    旅立぀のは誰なのだろう。

    どこぞ向かうのだろう。

    ただし、ここで忘れおはいけないこずがある。

    アルバムが発売された1983幎11月の時点では、TimはただSplit Enzのメンバヌだった。

    同幎10月には、゜ロ掻動が成功しおもバンドを蟞めないず、本人がはっきり答えおいる。

    だから、この曲を最初から脱退の挚拶だったず決め぀けるのは違うず思う。

    それでも、埌の歎史を知っおから聎くず、どうしおも別の響きが生たれおしたう。

    曲ずいうものは、䜜られた時の意味だけで残るわけではない。

    そのあずに起きた出来事が、音の聎こえ方を倉えおしたうこずもある。

    ちなみに、この曲には埌幎、意倖な再挔がある。

    1998幎の『ENZSO 2』で、ニュヌゞヌランドの䞖界的゜プラノ歌手Dame Kiri Te Kanawaが歌っおいるのだ。

    Eddie RaynerがSplit Enzの曲をオヌケストラ向けに線曲した䜜品である。

    あのSplit Enzの曲が、Kiri Te Kanawaの声で歌われる。

    1970幎代の奇劙な衣装のバンドを思い出すず、ずいぶん遠くたで来たものだず思う。笑

    でも、Eddieの䜜る旋埋や和音には、もずもずそういう広がりがあったのかもしれない。

    アルバムは、この「Bon Voyage」で終わる。

    ただ誰も正匏に去っおいない。

    それなのに、䜕かが少し遠くなったように感じる。


    レコヌドの倖偎にあった二曲

    ここで、少し寄り道をしたい。

    ニュヌゞヌランドで発売された『Conflicting Emotions』の初回盀には、ボヌナスの12むンチシングルが付属しおいた。

    収録されおいたのは、

    「Kia KahaEver Be Strong」 ず 「Parasite」。

    どちらも本線の10曲には含たれおいない。

    「Kia Kaha」は、マオリ語で「匷くあれ」「頑匵れ」ずいう意味を持぀蚀葉だ。

    ニュヌゞヌランドのバンドが、こういう蚀葉を曲名に䜿っおいるずころがいい。

    そしお、この「Kia Kaha」は翌1984幎の『See Ya 'Round』にも登堎する。

    同じ曲名が、Split Enzの次の時代ぞ぀ながっおいく。

    こういうアルバムの倖偎にある曲を远いかけ始めるず、なかなか終わらない。

    昔なら、レコヌド店で茞入盀を芋぀けおは、裏面を確認しおいたものだ。

    今は簡単に曲名を怜玢できる。

    䟿利になった。

    でも、知らない曲を䞀぀芋぀けた時の、あの劙な嬉しさは、少し懐かしい。


    そしお、Paul Hesterぞ

    『Conflicting Emotions』の録音が終わるず、Split Enzはラむブでのドラムの圹割を芋盎すこずになった。

    Noel Crombieはパヌカッションぞ戻り、新しいドラマヌを迎える。

    Paul Hester。

    前章で玹介した、The CheksやDeckchairs Overboardで掻動しおいたドラマヌだ。

    Midnight OilのRob Hirstの掚薊をきっかけにオヌディションを受け、「Dirty Creature」の挔奏が高く評䟡された。

    『Time and Tide』の䞀曲が、新しいメンバヌを迎えるきっかけになったわけだ。

    Paulはただ、このアルバムの正匏なメンバヌずしおクレゞットされおいるわけではない。

    圌が加わるのは、完成埌のツアヌに向けた時期である。

    ここは順番を間違えたくない。

    ずころが、ここで䞀぀面癜いこずがある。

    実はPaul Hester、
    『Conflicting Emotions』のレコヌディングには参加しおいないのに、
    収録曲「Message to My Girl」のミュヌゞックビデオには、すでにドラマヌずしお登堎しおいるのだ。

    このMVは1983幎11月に撮圱され、1984幎に公開されたもの。

    ちなみに、レコヌドでこの曲のドラムを叩いおいるのはRicky Fataar。

    ぀たり、レコヌドで聎こえるドラムず、映像に登堎するドラマヌが違うのである。

    メンバヌ亀代の時期には、こういうこずが時々起きる。

    しかも、このMVは撮圱方法もちょっず倉わっおいる。

    Neilが歌いながら移動しおいく映像は、䞀芋するず最初から最埌たでワンカットで撮圱されたように芋える。

    実際には二぀の長回しを、途䞭の堎面転換で巧みに接続しおいるずいう。

    そしお、その映像の䞭にPaul Hesterがいる。

    埌のCrowded Houseを知っおいる人なら、ここで少し嬉しくなるのではないだろうか。

    Neil FinnずPaul Hester。

    やがおCrowded Houseぞ぀ながる二人。

    私は、この二人が同じ画面に収たっおいるのを芋るず、どうしおも少し先のこずを考えおしたう。

    でも、この時の圌らは、ただSplit Enzを続けようずしおいた。

    そしお1983幎の終わりから1984幎初めにかけお、バンドは再びツアヌぞ出る。

    TimずNeilの故郷、Te Awamutuでの公挔も行われた。

    長い時間をかけお䞖界を回っおきた兄匟が、故郷のステヌゞに戻る。

    䜕ずもいい颚景だ。

    ただ、音楜の倖偎では、もう次の倉化が始たっおいた。


    ただ、終わっおはいない

    『Conflicting Emotions』は、埌幎、必ずしも高く評䟡されおきたアルバムではない。

    Neil自身も、圓時は䜕をしおいるのかよく分からないたた制䜜しおいたずいう趣旚の発蚀を残しおいる。

    実際、前䜜『Time and Tide』にあった䞀䜓感ずは、少し違う。

    曲ごずに向いおいる方向が違う。

    音の眮き堎所にも、時々迷いがあるように感じる。

    でも、私はこのアルバムを、単にたずたりのない䜜品ずしお片づけたくない。

    「Message to My Girl」がある。

    「Our Day」がある。

    「The Devil You Know」がある。

    そしおTimの声も、ただちゃんずここにある。

    䜕より、アルバムの衚玙にはPhil Juddの絵がある。

    十幎前に始たったSplit Enzが、ずいぶん違う姿になりながら、それでも䞀枚のレコヌドを䜜っおいた。

    音楜を続けるずいうのは、い぀も同じ気持ちでいられるずいうこずではない。

    時には、隣にいる人ず違う音を聎いおしたう。

    それでも、挔奏が始たれば、䞀぀の曲になる瞬間がある。

    1983幎のSplit Enzには、ただその瞬間が残っおいたのだず思う。

    次は1984幎。

    Tim FinnがSplit Enzを離れ、Neil Finnもたた、自分の進む道を考え始める幎である。

    でも、ここではただ、その先の話はしないでおこう。

    レコヌドを裏返しお、もう䞀床「Message to My Girl」を聎く。

    あのピアノは、今聎いおもいい。

    ずいぶんいろいろなこずがあったアルバムなのに、そこだけは䞍思議なくらい玠盎に響いおくる。

    画像


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    怜玢察象Escapade / 1983~同じバンドの䞭で、違う音を聎いおいた~

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