🎶『Voices』 Split Enz (1984)

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🎶『Voices』 Split Enz (1984)

Voices – Split Enz

(1984年アルバム『See Ya ’Round』収録)
作詞・作曲:Neil Finn
アルバム・プロデュース:Split Enz & Jim Barton


■ バンド最後のスタジオアルバム

「Voices」は、Split Enz 最後のスタジオアルバム『See Ya ’Round(1984)の6曲目に置かれた楽曲だ。
Tim Finn 脱退後、Neil Finn が実質的なリーダーとなって制作されたこのラストアルバムの中で、「Voices」は派手さこそないものの、一番“終わり”と“次の始まり”を感じさせる曲になっている。

ニュージーランド/オーストラリアでリリースされた『See Ya ’Round』は、もともと Neil の曲を中心にしたEP構想からスタートし、そこへ各メンバーの曲を足してフルアルバム化されたものだと言われている。
その流れの中、「Voices」は Neil が書いた一連の楽曲群のひとつでありながら、“このバンドの物語のエンドロール” のような役割を静かに担っている。

音楽ライターのレビューでも、「バンドのフェアウェル・ナンバーとしてこれ以上ふさわしい曲はない」と評されることがあるほどだ。


■ 歴史と自然のあいだで、未来の気配を聴く

歌詞を改めてなぞると、「Voices」はとても映像的な曲だとわかる。

1)図書館をさまよう ― “過去”との対面

Wander through the library / Volumes of the deceased
図書館の中をさまよい歩き
亡くなった人々の本をめくっていく

静かな図書館で、過去の人間たちの言葉に囲まれている主人公。

There’s no happy endings / History has been cruel
ハッピーエンドなんてどこにもなく
歴史は残酷だった

ここには、若いロックミュージシャンが“世界の大きさ”に気づいてしまったような感覚がある。
個人の恋や日常レベルではなく、「人類の歴史に目を向けたときの重さ」 が、さらっと、でも鮮烈に書かれている。

Feel the blood of ages / Flowing through my veins
幾つもの時代の血が
自分の血管の中を流れているのを感じる

自分もまた、長い時間の流れの一部に過ぎない――
Neil Finn らしいスケールの視点だ。

その直後に続く、

Still there is no reason / I wonder what’s coming
それでも答えは見つからない
この先、何がやって来るのだろう

という一節に、不安と好奇心が同居した“未来へのまなざし”がにじんでいる。

2)森を歩きながら ― “生きている世界”の気配

後半では、舞台は図書館から森へ移る。

Wander through the forest / Losing track of time
森をさまよい歩き
時間の感覚を失っていく

Lessons in green and gold / Been growing on for years
緑と黄金色の中にある教えは
何年もかけて育ってきたもの

ここでの“緑と金”は、樹木の葉や陽の光、苔むした地面など、
自然そのものが蓄えてきた色と時間の長さを象徴している。

図書館で出会う“紙の上の歴史”に対して、森は“今も生き続ける歴史”だ。
どちらも主人公に何かを教えようとしている。

3)Voices=見えない“導き”

曲のタイトルにもなっているサビが、全体の意味をまとめてくれる。

I hear voices / Leading me on / The wise and the strong
声が聞こえる
その声がボクを導いていく
賢くて、強い者たちの声が

ここで言う “voices” は、幽霊のような存在ではなく、
本の中の言葉や、森の中の“時間の感触”、
そして先人たちの生き方や教え――
そういったものがひとつに溶け合った“見えない導き”のように感じられる。

Urging me on
「前に進め」とせきたてる

バンドが終わりに向かっている時期に書かれた曲だと思うと、
これは Split Enz の先に進もうとする Neil 自身の心の声のようにも聴こえる。

実際、「Voices」は『See Ya ’Round』という最終作の中で、
“まだ終わりではない/ここから先がある”というニュアンスを強く放っていると言われる。


■ 静かな緊張感と、サックスの余韻

アレンジは決して派手ではないが、とても緻密だ。

  • Neil Finn の穏やかなリード・ボーカル

  • Eddie Rayner のキーボードによる空間的なコード

  • Wilbur Wilde のサックスが曲後半で広げる“黄昏感”

リズムは大きく揺れず、
曲全体がゆっくりと前に進む列車のようなテンポ感を保っている。

サックスが入ることで、どこか“エンドタイトル”のような情景が浮かぶのも印象的だ。
それはまさに、“最後のスタジオアルバムの一曲”という位置づけを象徴していると言っていい。


■ バンドの文脈の中で

『See Ya ’Round』は、Tim Finn の脱退後、
Neil にとっては「兄のバンドを引き継いで終わりまで走る」という、
かなりプレッシャーの大きいプロジェクトだった。

その状況で書かれた「Voices」は、

  • 過去の歴史

  • 自然の時間

  • 見えない声に導かれて進もうとする自分

を重ね合わせた、極めて個人的で、同時に普遍的な曲になっている。

のちに Neil は Crowded House で世界的成功をつかむわけだが、
その “一歩手前の自分” を静かに刻んだ曲として、
「Voices」はファンの間でじわじわと評価を高めていった。


■ 総評:終わりと始まりのあいだで響く、静かな声

「Voices」は、派手なシングル曲ではない。
だが、Split Enz のラストアルバムの中で、もっとも“これから先”を感じさせる一曲だ。

  • 図書館で過去と向き合い

  • 森で“生きた時間”に触れ

  • 見えない声に「進め」と言われる

それはバンドの物語が終わろうとする瞬間に、
Neil Finn が自分自身に言い聞かせていた言葉でもあったのかもしれない。

静かで、短くて、地味に見える曲。
それでも「Voices」は、
Split Enz と Crowded House の狭間にある“通過点の心情”を、最も率直に切り取った、重要な一曲だと思う。


SPLIT ENZ

■ メンバー(バンド本体)

  • Neil Finn – リード・ヴォーカル(曲により)、ギター。

  • Eddie Rayner – キーボード/シンセサイザー/バック・ヴォーカル。

  • Noel Crombie – パーカッション/バック・ヴォーカル。

  • Nigel Griggs – ベース/バック・ヴォーカル。

  • Paul Hester – ドラムス/バック・ヴォーカル。


■ 追加ミュージシャン(サポート/ゲスト)

  • Wilbur Wilde – サックス(「Voices」を含むトラックに参加)

  • Bob Venier – フリューゲルホルン(同アルバムのインストルメンタルに参加)

See Ya ‘Round(1984)

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