🎸おじさんギタリストシリーズ⑲ 新曲は風呂で舞い降りる編
湯気とともに突然訪れる“天才タイム”
ギタリストという生き物は、
練習中でもリハ中でも作曲中でもなく、
なぜか一番の天才モードが“お風呂”で発動する。
特に50代になると、その傾向は加速する。
湯気と湿度が脳をうまく蒸してくれるのか、
お湯の入り方が神経を整えるのか、
とにかく風呂場だけ作品の神さまが降りてくる。
そしておじさんギタリストは今日も湯船で天才になる。
…ただし、
風呂から出た瞬間すべてを忘れる。
■① 湯船に浸かった瞬間だけ“名メロディメーカー”になる
お湯に浸かったその瞬間、
いつもは出てこないメロディがスルスル出てくる。
「あれ…?今日なんか降りてきてるぞ?」
口ずさむと完璧だ。
お湯の響きがまた良い。
風呂場のリバーブは世界最高のエフェクター。
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コーラス深め
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リバーブ多め
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湯気でアンビエンスばっちり
思わず言ってしまう。
「これ、いける曲やん…!」
湯船の中では誰でも天才。
特におじさんは天才。
■② しかし、風呂を出ると脳の“保存”が行われない
湯から上がった瞬間、
急にIQが通常モードに戻り、こうなる。
「あれ?どんなメロディだったっけ?」
風呂の中であれだけのメロディを作ったはずなのに、
出た瞬間、頭の中に残ってるのは
“気持ちよかった”という感想だけ。
あの名フレーズはどこへ消えたのか?
風呂場の排水口に吸い込まれてしまったのか?
湯気と一緒に空へ昇ってしまったのか?
記憶のバックアップが甘いのが50代クオリティ。
■③ 焦ってメモアプリを開こうとする姿が完全に“別の競技”
曲を忘れないために、
おじさんギタリストは風呂から出て猛ダッシュでスマホに向かう。
だが現実はこうだ。
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足が濡れてて滑りそう
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タオルが肩にかかったまま
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髪の毛から水がポタポタ
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半裸で廊下を走る
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指紋認証が濡れて反応しない
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メモアプリどこ?
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ロック解除にイライラする
完全に違うスポーツ。
ギターじゃなくて、風呂上がり短距離走。
本人は必死だが、
家族から見たら
“謎の焦る中年男性”でしかない。
■④ メモアプリを開いた頃にはほぼ忘れている悲しみ
やっとメモアプリを開いても、
もうメロディは8割消えている。
残ったのは断片だけ。
「タララ…ラー…えー…なんやったっけ?」
「すごい良かったのに…思い出せん…」
風呂の天才、風呂を出ると凡人。
この落差がつらい。
でも、その“惜しさ”すら愛おしいのが、
おじさんギタリストの人生。
■⑤ 風呂の中の“良い音”に騙されている説
風呂場は天然のリバーブハウス。
どんな音でも3割増しで良く聞こえる。
つまり湯船で作ったメロディが良かったのではなく、
風呂場が強すぎる だけの可能性もある。
でもおじさんギタリストは信じたい。
「いや、あれは良かったはず」
この自己肯定が大事。
自己肯定だけで生きてきたバンド人生。
■⑥ でも、たまに奇跡のように覚えてる時がある
何度か忘れて落ち込んでいると、
ある日突然、
ちゃんと記憶に残るメロディが出てくる。
湯船で作ったアイデアが、
シャワーの音を浴びて、
換気扇の風を抜けて、
どこかのタイミングで脳に保存される。
たまに思う。
「もしかして湯気が俺のWi-Fiなんかな?」
そんな馬鹿なことを言いながらも、
たまに出てくる“奇跡の1曲”があるからやめられない。
■⑦ 結局、おじさんギタリストにとって風呂はスタジオだ
風呂は練習室。
浴室はライブ会場。
リバーブは無料。
湯気は照明。
家族から見たらただの風呂場だが、
おじさんにとっては
アイデアの宝箱 だ。
忘れてもいい、
また湯に浸かればまた新しいメロディが生まれる。
人生のアイデアは、
案外こういう場所に転がっている。
50代のおじさんギタリストは今日も湯船で口ずさむ。
「この曲、絶対いい気がする…!」
そして風呂を出た瞬間に忘れる。
そんな毎日も、なんか悪くない。
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