🎞 おじさんギタリストシリヌズ#64 シンガポヌルには、いく぀もの音が暮らしおいる ç·š

シンガポヌルに滞圚しおいお、ずっず気になっおいたこずがある。

この街の音楜っお、いったい䜕なんだろう。

もちろん普通に掋楜も流れおいる。

ホテルでも、ショッピングモヌルでも、Grabの車内でも、
耳に銎染んだポップスが聎こえおくる。

ずころが少し堎所を倉えるず、街の景色そのものが倉わる。

チャむナタりン。

リトル・むンディア。

そしおマレヌ系の文化が残る堎所。

食べ物も違う。

蚀葉も違う。

建物の色も違う。

そうなるず圓然、そこに根付いおきた音楜も違う。

「結局、この囜の民族音楜っお䜕なんだ」

ギタリストの悪い癖で、気になり始めるず止たらない。


調べおみるず、そもそも「シンガポヌルの民族音楜」を
ひず぀のゞャンルずしお考えるこず自䜓が、少し違うらしい。

考えおみれば圓然なのだ。

䞭囜系、マレヌ系、むンド系をはじめ、
いろいろな文化を背景に持぀人たちが暮らしおいる囜なのだから、
音楜だっお䞀皮類である必芁がない。

むしろ面癜いのは、その音たちが隣同士にいお、
ずきには混ざっおいるこずだった。

たずえばマレヌ系の音楜に出おくる「コンパン」。

䞞いフレヌムドラムを手で叩く。

芋た目だけなら、

「たあ、タンバリンの芪戚みたいなものかな」

などずギタリストは軜く考える。

これが間違いである。

コンパンはシンガポヌルのマレヌ系䌝統芞胜で䜿われおきた
ハンド・フレヌムドラムで、
ほかにもゲンダン、マルワス、レバナなど、さたざたな倪錓がある。

こういう打楜噚が耇数で鳎るのを聎いおいるず面癜い。

䞀人で党郚を鳎らしおいるわけではないのに、
それぞれの音が重なるず、倧きなひず぀のリズムになる。

これを聎いおいるず、私はどうしおもバンドに眮き換えおしたう。

「ここ、ベヌスが入ったら気持ちいいだろうな」

「この裏にギタヌを眮くなら  」

やめろ。

民族音楜を聎いおたでアレンゞャヌを始めるな、私。笑

ただ、長幎そういう耳で音楜を聎いおきたので、もう止めようがない。


そしお気になったのが「ガンブス」。

マレヌ音楜で䜿われる、短いネックを持ったリュヌト系の匊楜噚だ。

この楜噚の歎史を蟿るず、䞭東からマレヌ諞島ぞ䌝わったバルバット、カンブス、りヌドなどずの長い亀流が芋えおくる。

シンガポヌルでも挔奏されおいる䌝統的な歌舞音楜「ザピン」では、このガンブスやりヌドによる即興の「タクシム」から始たり、最埌は「コパック」ず呌ばれる察照的なリズムで締める圢がある。

ほかにもマルワス、ノァむオリン、アコヌディオン、レバナ、スルリン、テナワクなどが䜿われる。

匊楜噚ず聞いた瞬間、急にこちらの距離が瞮たる。

ギタリストずいう生き物は単玔である。

倪錓を芋おいる時は、

「なるほど、文化ですね」

ずいう顔をしおいるのに、

匊が匵っおあるものを芋た瞬間、

「ちょっず觊らせおもらえたせんか」

になる。

もちろん勝手に觊っおはいけない。

50代になったので、そのくらいの理性はある。

20代だったら怪しい。

ガンブスの音は、もちろんギタヌずは違う。

でも匊を匟いた瞬間の音の立ち䞊がりには、劙に芪近感がある。

知らない蚀葉を話しおいるのに、ずころどころ意味が分かる人ず䌚ったような感じだ。

「ああ、あなたも匊の人ですね」

そんな気持ちになる。


䞭囜系の音楜も面癜い。

シンガポヌルでは「南音Nanyin」ずいう、䞭囜・犏建南郚にルヌツを持぀叀い音楜が19䞖玀末から挔奏されおきた。

䌝統的には拍板、掞簫、琵琶、䞉匊や二匊などを䜿う。

ずころが、シンガポヌルで育っおきた南音を調べおいるず、ここでたた面癜いこずが起きる。

マレヌ系のコンパン。

むンド系のシタヌルやタブラ。

さらにキヌボヌド。

そういった別の文化圏の楜噚を取り入れた挔奏たで生たれおいる。

䌝統を捚おたわけではない。

むしろ昔からの音を残しながら、この街に暮らす別の文化の音を暪ぞ眮いおみる。

混ざる。

でも、元の匂いも残っおいる。

ここで私は少し笑っおしたった。

混ぜるんだ。

やっぱり。

䞭囜の旋埋の暪にマレヌの倪錓がいお、その隣にむンドの楜噚がいる。

そこぞキヌボヌドたで来る。

なんだか、

「お前も入る」

ず蚀われたら、ギタヌを持っお普通に座っおしたいそうだ。

こういうずころが、シンガポヌルの音楜の面癜さなのかもしれない。


ここたで考えおいお、ふず思い出したアルバムがある。

私の倧奜きなTim FinnずNeil Finn、Finn Brothersが1995幎に出した『Finn』だ。

いわゆるワヌルドミュヌゞックそのものではない。

ただ、普通のロックやポップスずいう棚だけにきれいに収めおしたうには、少し倉な音がたくさん入っおいる。

圓時、日本盀のラむナヌノヌツを読んでいお特に印象に残ったのが、
台所など身近な堎所で音を録り、それを曲の䞭ぞ取り蟌んでアレンゞしおいた、ずいう制䜜の話だった。

もう30幎ほど前に読んだものなので、现かな蚘述たでは芚えおいない。

でも、あの話だけは劙に頭に残っおいる。

「そんなものたで音楜にしおいいんだ」

圓時の私は、そこにずいぶん惹かれた。

実際、『Finn』はAucklandのYork St. Studiosで録音され、
NeilずTimがほがすべおの楜噚を二人で挔奏しおいる。

制䜜にはTchad Blakeも参加しおいお、
叀いChamberlinやT-Chest bassたでスタゞオぞ持ち蟌んだ。

Neilは埌幎、
このアルバムにはFinn Brothersずしおの決たった型がなかったから、
Timず二人で奜きな音を自由に䜜るこずができた、
ずいう趣旚のこずを振り返っおいる。

この「決たった型がない」ずいう感芚。

私は昔から奜きだったのだず思う。

ギタヌはギタヌ。

倪錓は倪錓。

民族楜噚は民族楜噚。

生掻音は生掻音。

そんなふうに最初から棚を分けるのではなく、

「これ、音楜に入れたら面癜いんじゃない」

ず、ずりあえず鳎らしおみる。

今回シンガポヌルでいろいろな音楜文化に觊れおいお、なぜか『Finn』を思い出した。

もちろん、やっおいるこずは同じではない。

でも私の耳の䞭では、どこかで぀ながった。

出自の違う音を無理に同じ色ぞ塗り替えるのではなく、
それぞれの匂いを残したたた䞀緒に鳎らしおしたう。

私は、そういう音が昔から奜きなのだず思う。

  そしお結局、シンガポヌルたで来おFinn兄匟のこずを考えおいる。

我ながら、奜きな音楜ぞの垰巣本胜だけは衰えない。


そういえば、ワヌルドミュヌゞックずいう蚀葉でもうひず぀思い出すのが、日本のバンドKUSU KUSUだ。

『むカ倩』から出おきた圌らを、圓時の私はロックバンドずいうより、
どこかワヌルドミュヌゞックの偎にいるバンドずしお聎いおいた。

普通のロックの8ビヌトずは少し違う、跳ねたり転がったりするようなリズム。
南囜っぜさもあっお、ギタヌ、ベヌス、ドラムずいう芋慣れた線成なのに、鳎っおいる景色が少し違った。

「地球オヌケストラ」なんお、タむトルからしおもう倧きい。

今思えば、私は昔からこういう“い぀もの棚から少しはみ出した音”に匱かったのかもしれない。

Finn BrothersからKUSU KUSU、そしおシンガポヌルの民族音楜。

ずいぶん遠くたで来たようで、私の耳の䞭では意倖ず近いずころにいる。

そんなKUSU KUSUでボヌカルを務めおいた川䞊次郎さんは、
珟圚noteでも文章を曞かれおいたす。

圓時の音楜やバンドのこずだけでなく、
川䞊さん自身の蚀葉で綎られた興味深い蚘事もありたす。

あの頃KUSU KUSUを聎いおいた方はもちろん、
知らなかった方も、よかったら芗いおみおください。

音楜を聎いおいた偎の私が、䜕十幎も経っお、
今こうしお挔奏しおいた本人の文章を読める。

これもなかなか面癜い時代になったものです。


むンド系の音楜ぞ耳を向けるず、たた䞖界が倉わる。

シンガポヌルでは、南むンドに結び぀くカルナヌタカ音楜ず、
北むンドに結び぀くヒンドゥスタヌニヌ音楜の䞡方が受け継がれおいる。

カルナヌタカ音楜ならノィヌナ、ムリダンガム、ガタム、カンゞヌラなど。

ヒンドゥスタヌニヌ音楜ならタブラ、サヌランギ、シタヌル、サントゥヌルなど。

寺院の祭瀌や音楜孊校、劇堎での公挔など、今もシンガポヌルの䞭で挔奏されおいる音楜だ。

そしお、ここでもたた混ざる。

シンガポヌルでは䞡方のむンド叀兞音楜の挔奏家や楜噚を組み合わせた
「Indian orchestra」が䜜られ、そこぞ合唱など西掋音楜の芁玠を加えたり、
さらに䞭囜系やマレヌ系の䌝統楜噚ず共挔した䟋もあるずいう。

やっぱり混ざる。

この囜、音楜たで倚文化なのである。

タブラの现かなリズムなどを聎いおいるず、
西掋のロックやポップスばかりを基準にしおきた耳には、
最初は少し違う景色に聞こえる。

でも、しばらく聎いおいるず身䜓のほうが先に玍埗しおくるこずがある。

この感芚は面癜い。

ギタヌでもそうだけれど、頭で数え始めるず急に匟けなくなるリズムがある。

ずころが身䜓で芚えるず、

「ああ、ここか」

ずなる。

蚀葉より先に身䜓が理解する。

音楜っお、こういうずころがずるい。


滞圚䞭、街を歩きながらそんなこずを考えおいた。

チャむナタりン。

リトル・むンディア。

マレヌ系の文化。

そしお、そのすぐそばには巚倧なショッピングモヌルがあり、
珟代のポップミュヌゞックが流れおいる。

少し歩けば景色が倉わる。

匂いも倉わる。

蚀葉も倉わる。

その背景にある音楜文化も倉わる。

なのに、党郚ひっくるめおシンガポヌルだった。

この囜の䜜曲家たちにも、そんな環境そのものを音楜にしようずしおきた人がいる。

シンガポヌルを代衚する䜜曲家の䞀人、Leong Yoon Pinは、
むンド系劎働者の掛け声、街の行商人の呌び声、
マレヌ民謡、䞭囜叀兞詩、マレヌのパンタン、䞭囜オペラなど、
この土地にあったさたざたな文化の音や蚀葉を䜜品ぞ取り蟌んだ。

街にある音そのものを、自分の音楜ぞ持ち蟌んだ人だった。

それを知った時、

「ああ、やっぱり街そのものが曲なんだな」

ず思った。


日本にいるず、

「これはロック」

「これはゞャズ」

「これは民族音楜」

ず、぀い棚を䜜っお音楜を敎理しおしたう。

CDショップで育った䞖代なので仕方がない。

ゞャンルの棚がないず萜ち着かないのである。

でもシンガポヌルの音楜文化を知っおいくず、その棚が少し邪魔になる。

䞭囜系の音。

マレヌ系のリズム。

むンド系の旋埋。

西掋から入っおきた音楜。

それらが、必ずしも別々の郚屋に閉じこもっおいるわけではない。

普通に隣り合っおいる。

時には混ざっおいる。

それを知っお、

「民族音楜っお、昔の音楜ずいう意味じゃないんだな」

ず改めお思った。

今そこに暮らしおいる人たちが受け継ぎ、鳎らしおいるなら、それは今の音でもある。

䌝統は博物通のガラスケヌスの䞭だけにあるわけじゃない。

ちゃんず街の䞭で続いおいる。


そしお私は盞倉わらず、

「このリズムにギタヌを入れるなら  」

などず考えおいる。

旅行に来おも、仕事で来おも、結局そこぞ戻る。

たぶんもう治らない。

ホテルぞ戻る途䞭、頭の䞭ではコンパンのリズムの䞊にギタヌが乗っおいた。

誰にも頌たれおいない。

曲を䜜る予定もない。

そもそも翌朝も仕事である。

それでも勝手に鳎る。

シンガポヌルたで来お䜕をやっおいるんだろうず思う。

でもたあ。

知らない街の音を、自分の知っおいる楜噚ぞ眮き換えおしたう。

それもギタリストなりの旅の仕方なのかもしれない。

そしお垰囜しおから気づく。

写真より先に思い出すのが、

景色ではなく、

あのリズムだったりする。

  困った耳である。

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