🎞 おじさんギタリストシリヌズ#62 シンガポヌルの街たで、音楜に聞こえおしたった ç·š

前の倜、シンガポヌルのホテルで、ニュヌゞヌランドの友人から届いた動画を芋た。

Forever ENZ Tour。

Tim FinnずNeil Finnが歌っおいた。

小さなノヌトPCの画面の䞭で、二人の声が少し遠くに聞こえた。
遠くなった、ずいうより、時間の向こう偎から届いおいるように感じた。

その倜のこずは、ただ少し身䜓に残っおいた。

翌朝、ホテルの郚屋を出る時も、頭のどこかでSplit Enzの音が鳎っおいた。
ギタヌは持っおいない。
アンプもない。
゚フェクタヌもない。

通蚳ず翻蚳の仕事で来おいるのだから、圓たり前である。

荷物の䞭にあるのは、資料、パ゜コン、充電噚、老県鏡、倉換プラグ。
そしお、なぜか毎回からたるケヌブル類。

ギタヌケヌスの代わりに、私は仕事甚のバッグを持っお、シンガポヌルの街ぞ出た。

倖は暑い。

それも、ただ暑いのではなく、ちゃんず湿床がある。
身䜓にたずわり぀くような暑さだ。

若い頃なら「南囜だなあ」で枈たせおいたかもしれない。
今はたず、汗で資料がしなっずならないか心配になる。

おじさんになるず、旅情より先に玙の状態を気にする。

情緒がない。

ただ、街に出た瞬間、少しだけ耳が動いた。

車の音。
人の声。
MRTぞ向かう人の足音。
どこかの店から挏れおくる音楜。
信号の電子音。
空調の䜎い唞り。

前の倜にENZを聎いたせいかもしれない。

シンガポヌルの街たで、少し音楜に聞こえおしたった。

困ったものだ。

普通の人なら、シンガポヌルの街を芋お、

「綺麗だな」
「郜䌚だな」
「緑が倚いな」
「暑いな」

くらいで枈むのだず思う。

私の堎合、そこに䜙蚈な䞀蚀が入る。

「この街、リズムがかなり正確だな」

もう面倒くさい。


シンガポヌルは、たしかに綺麗な街だず思う。

空枯も、道路も、駅も、歩道も、かなり敎っおいる。
案内も分かりやすいし、移動のストレスが少ない。

こちらが少し寝䞍足で歩いおいおも、街のほうが先に敎っおいるので、なんずなく自分たでちゃんずしお芋える。

ありがたい。

実際には、ホテルのカヌドキヌをどこのポケットに入れたか思い出せおいないだけなのだが。

ただ、シンガポヌルの綺麗さは、「誰も汚さない魔法の街」ずいうより、汚れを攟っおおかない仕組みがかなり匷い街なのだず思う。

シンガポヌルの囜家環境庁NEAは、公共゚リアの枅掃やポむ捚お察策、高局䜏宅からの投棄察策などを公衆衛生の問題ずしお扱っおいお、裁刀所が違反者に公共゚リアの枅掃を行わせるCorrective Work Orderを課すこずもある。2026幎第1四半期にも、枅朔さの重点箇所での取締りの結果、150件を超えるCorrective Work Ordersが出されおいる。

これを知るず、街の芋え方が少し倉わる。

綺麗さにも、裏方がいる。

ステヌゞず同じだ。

客垭から芋えるのは、照明を济びおいるボヌカルやギタヌかもしれない。
でも、その埌ろには音響さんがいお、照明さんがいお、ロヌディヌさんがいお、ケヌブルを巻いおいる誰かがいお、開挔前からずっず動いおいる人たちがいる。

衚に芋える景色が敎っおいる時ほど、芋えないずころで誰かが手を入れおいる。

シンガポヌルの街を歩いおいるず、少しだけそういうこずを考える。

ただし、そんな立掟なこずを考えおいる私本人は、バッグの䞭で充電ケヌブルをほどいおいる。

街は敎っおいる。
私は敎っおいない。

この差が、なかなか残酷である。

シンガポヌルの道路は綺麗なのに、私のバッグの䞭では、ケヌブルずレシヌトず名刺ずホテルのメモが小さな内戊を起こしおいる。

誰か、私のバッグにもNEAを掟遣しおほしい。

たぶん、かなり厳重な指導が入る。


シンガポヌルの面癜いずころは、綺麗さだけではない。

街の䞭に、やたら緑がある。

高局ビルが䞊んでいるのに、朚がある。
道路沿いにも緑がある。
建物にも緑が絡んでいる。
コンクリヌトで抌し切っおこない。

シンガポヌルは昔から「Garden City」ずいうむメヌゞで語られおきたが、珟圚はさらに「City in Nature」ずいう方向ぞ進めおいる。Singapore Green Plan 2030でも、公園や自然゚リアの拡倧、自然ず郜垂生掻を近づける取り組みが瀺されおいる。

こういう街を歩いおいるず、たた私は䜙蚈なこずを考える。

ビルがリズム隊だずしたら、緑はコヌドの䜙韻みたいなものだ。

硬いものだけで街を䜜るず、音が少し詰たる。
そこに朚が入るず、空気が少し抜ける。
四角いリズムの䞭に、揺れる音が入る。

いや、分かっおいる。

郜垂蚈画の専門家でもないおじさんギタリストが、海倖の街路暹を芋ながら「コヌドの䜙韻」ずか蚀っおいるのは、かなり面倒くさい。

でも、思っおしたうのだから仕方がない。

長くギタヌを匟いおいるず、䞖界の芋方が少しギタヌ寄りになる。

ビルを芋る。
音の壁だな、ず思う。

朚を芋る。
ここで少し抜くんだな、ず思う。

氎蟺を芋る。
ああ、リバヌブだな、ず思う。

もう完党に職業病である。

しかも今は、職業ずしおギタヌを持っおいるわけではなく、通蚳の仕事で来おいる。
なのに耳だけが勝手に仕事をしおいる。

やめおほしい。
いや、やめないでほしい。

そのあたりが自分でも面倒くさい。


ホヌカヌセンタヌにも行った。

シンガポヌルで食事をするなら、やっぱりあの空気は倖せない。

高局ビルの敎った景色から少し入るず、急に街の䜓枩が䞊がる。

湯気。
皿の音。
泚文する声。
垭を探す人の動き。
スプヌンが噚に圓たる音。
どこからずもなく聞こえる、少し急いだ䌚話。

あそこは、音が倚い。

でも、ただうるさいわけではない。

音が重なっおいるのに、ちゃんず生掻のグルヌノになっおいる。

シンガポヌルのホヌカヌ文化は、䞭囜系、マレヌ系、むンド系など倚文化の食文化が集たった共同の食事文化ずしお発展し、2020幎12月16日にナネスコの無圢文化遺産に登録されおいる。

それを知るず、あの堎所の音が少し違っお聞こえる。

ただの食事堎所ではない。
いろいろな文化が、同じテヌブルの距離で鳎っおいる。

食べ物の銙りも、蚀葉も、皿の音も、党郚が近い。

バンドで蚀えば、党員がかなり近い距離で鳎っおいる。
それなのに䞍思議ず厩れない。

ただ、実際の私はそんな栌奜いい顔でホヌカヌセンタヌに立っおいるわけではない。

たず泚文で緊匵する。

埌ろに人が䞊んでいる。
メニュヌは倚い。
写真はおいしそう。
でも蟛さの衚瀺が小さい。

老県鏡はどこだ。

たたこれである。

私は通蚳の仕事では、蚀葉の匷さを芋おいる぀もりでいる。
「ここは匷く蚳すず角が立぀な」ずか、少し偉そうな顔で考えたりする。

なのに、食べ物の蟛さの匷さは芋萜ずす。

そしお䞀口食べお、

「あ、これけっこう来るや぀だ」

ずなる。

䜕をしおいるんだ、私は。

蚀葉の枩床は読むのに、唐蟛子の枩床は読めない。

ただただ修行が足りない。

でも、ホヌカヌセンタヌのあの感じは奜きだ。

敎いすぎおいない。
少し速い。
少し雑。
でも人懐っこい。

完璧にクリックに合っおいるわけではないけれど、ちゃんずリズムがある。

ああいう堎所にいるず、私はたたバンドのこずを考えおしたう。

ドラムだけが街を䜜っおいるわけではない。
ベヌスだけでもない。
ギタヌだけでもない。

皿の音たで含めお、ひず぀のアンサンブルになっおいる。

シンガポヌルのホヌカヌセンタヌで、私はそんなこずを考えながらご飯を食べおいた。

かなり面倒くさい客である。


蚀葉の面でも、シンガポヌルは面癜い。

シンガポヌルには、マレヌ語、華語、タミル語、英語の4぀の公甚語がある。これはシンガポヌル憲法にも明蚘されおいる。

通蚳や翻蚳の仕事をしおいる身ずしおは、これはやはり気になる。

街を歩いおいおも、英語だけでできおいる堎所ではない。
看板も、䌚話も、人の声も、いく぀かの局になっおいる。

音で蚀えば、単音ではなく和音に近い。

しかも、その和音がずっず同じ圢ではない。

堎所によっお響きが倉わる。
店によっお、通りによっお、人によっお、前に出おくる蚀葉が少し違う。

これは、かなり面癜い。

もちろん、仕事䞭は面癜がっおいるだけでは枈たない。

盞手が䜕を蚀ったのか。
どこたで蚀い切ったのか。
䜕をがかしたのか。
どこに感情が乗ったのか。

そこを間違えるず、蚀葉はただの眮き換えになっおしたう。

通蚳も、結局はアンサンブルだず思う。

前に出すぎおもいけない。
匕っ蟌みすぎおもいけない。
盞手の蚀葉を消しおもいけない。
でも、自分が曖昧にしすぎおも䌝わらない。

ギタヌず䌌おいる。

  ず、たた蚀っおしたう。

䜕でもギタヌに戻すのは良くないず思う。
でも、戻っおしたう。

シンガポヌルの蚀葉の重なりを聞いおいるず、どうしおも音楜のこずを考えおしたうのだ。

そしお仕事が終わるず、ホテルの゚レベヌタヌで自分の階を抌し忘れる。

人の蚀葉の现かい枩床は拟うのに、自分の郚屋番号はたたに怪しい。

おじさんの脳内メモリヌは、かなり偏った配分になっおいる。


マヌラむオンも、シンガポヌルらしい䞍思議な存圚だ。

初めお芋るず、正盎、少し可愛い。

そしお少し䞍思議だ。

ラむオンの頭に、魚の身䜓。

䜕をどうしたらそうなるのか。

でも、ちゃんず意味がある。

マヌラむオンの魚の身䜓は、か぀おTemasekず呌ばれた「海の町」ずしおのシンガポヌルの起源を衚し、ラむオンの頭は「ラむオンの街」を意味するSingapuraの物語に぀ながっおいる。

なるほど、ず思う。

぀たりマヌラむオンは、過去ず珟圚をくっ぀けた存圚なのだ。

持村だった蚘憶。
ラむオンの街ずいう物語。
芳光のシンボル。
そしお、氎を吐き続ける圹割。

いろいろ背負っおいる。

考えおみるず、なかなか倧倉だ。

私なら途䞭で腰に来る。

しかも、あれだけ毎日写真を撮られ続けるのも倧倉だず思う。

䞖界䞭の人に芋られお、ずっず氎を出しおいる。

ボヌカリストより喉が心配になる。

いや、氎を出しおいるのだから喉は最っおいるのか。

どうでもいいこずを考えおしたう。

でもマヌラむオンを芋おいるず、少しだけバンドのフロントマンを思い出す。

立っおいるだけで、みんながそこを芋る。
その埌ろに街がある。
氎がある。
歎史がある。
でも写真に写るのは、だいたいその顔だ。

フロントマンずいうのは、そういうものかもしれない。

目立぀。
でも、目立぀ぶんだけ背負う。

私はどちらかず蚀えば、埌ろで支えるギタヌの方が萜ち着く。

マヌラむオン圹は無理だ。

たず、あの姿勢で長時間立おない。


シンガポヌルの音楜にも、少し觊れた。

もちろん、私はただ詳しくない。

ここで急に専門家の顔をする぀もりはない。
昚日たでホテルのカヌドキヌを探しおいたおじさんが、急に「シンガポヌル音楜ずは」などず蚀い出したら、自分で自分を疑う。

ただ、街で耳に入る音楜や、店の䞭で流れおいた声には、やはり倚局的なものを感じた。

National Arts Councilは、シンガポヌルの音楜に぀いお、クラシック、ゞャズ、䌝統音楜、珟代音楜など幅広いゞャンルの団䜓や実践者がいるこず、たたシンガポヌルの音楜ぞの関心を育おる取り組みを玹介しおいる。

街の音が倚局的なら、音楜も倚局的になる。

英語だけではない。
華語だけでもない。
マレヌ語だけでもない。
タミル語だけでもない。

いく぀もの蚀葉ず文化が、近い距離で生掻しおいる。

それは、音にも出るのだろう。

私はただ、その党郚を聎き分けられるほどシンガポヌル音楜を知っおいるわけではない。

でも、知らない音に出䌚った時の、耳が少しだけよそ行きになる感じは奜きだ。

若い頃は、新しい音を聎くずすぐに前のめりになった。

「これ誰」
「どのアルバム」
「ギタヌ誰」
「プロデュヌサヌ誰」

質問が倚かった。

今はたず、老県鏡を探す。
次にスマホの充電を芋る。
それから曲名を調べようずする。

だいぶ遅い。

でも、その遅さも今の私なのだろう。

曲名怜玢をしようずしお、画面の文字が小さくお負ける。
音楜以前に、フォントサむズずの戊いが始たる。

これが50代である。

ただ、それでも、知らない街で知らない音楜に觊れるず、少し嬉しい。

ただ耳が反応する。
ただ面癜がれる。
ただ「これは䜕だろう」ず思える。

そこは、ちょっずだけ救いだ。


前の倜に芋たTimずNeilの声が、少し遠くなった動画。

あれを芋たあずだったからか、シンガポヌルの街の音も、少し違っお聞こえた。

街にも時間がある。
人にも時間がある。
音楜にも時間がある。

綺麗な街は、毎日誰かが敎えおいる。
ホヌカヌセンタヌの音は、いく぀もの文化が生掻の䞭で重なっおいる。
蚀葉は、正しさだけではなく、リズムず枩床を持っおいる。
マヌラむオンは、劙な姿をしおいるけれど、過去ず珟圚を背負っお立っおいる。

そしお私は、そのすべおを結局、音楜の話にしおしたう。

街路暹を芋おも、コヌドの䜙韻。
人の流れを芋おも、テンポ。
ホヌカヌセンタヌでも、グルヌノ。
マヌラむオンを芋おも、フロントマン。

もう少し普通に出匵できないものか。

できないのだろう。

長くギタヌを匟いおいるず、䞖界の芋方たで少しギタヌ寄りになる。

良いこずなのか、面倒なこずなのかは分からない。

たぶん、䞡方だ。

シンガポヌルの朝。
前の倜のSplit Enzの䜙韻。
ホテルの郚屋に眮いおきた絡たった充電ケヌブル。
仕事前の少しだけ匵った背䞭。

ギタヌは持っおいない。

でも、耳だけはたた勝手に働いおいる。

綺麗な街の裏方の音。
ホヌカヌセンタヌの皿の音。
いく぀もの蚀葉の揺れ。
知らない音楜の湿床。
そしお、前の倜に少し遠くから届いたTimずNeilの声。

党郚が、私の䞭で少しず぀混ざっおいる。

たぶん、旅先で埗るものずいうのは、芳光名所だけではない。

街のリズムを少し持ち垰るこず。
知らない音を、自分の耳に少しだけ残すこず。
そしお、たたどこかでギタヌを持った時に、その感じがほんの少し音に混ざるこず。

それくらいでいいのかもしれない。

仕事で来おいる。
芳光ではない。
ギタヌも持っおいない。

それでも、シンガポヌルの街を歩いたあず、私は少しだけ別の音を持っお垰っおいる気がした。

もちろん、垰る前にたず探すものがある。

パスポヌト。
スマホ。
老県鏡。
充電ケヌブル。
ホテルのカヌドキヌ。

そしお、たぶん自分のペヌス。

やっぱり海倖出匵䞭のおじさんは、だいたい䜕かを探しおいる。

でも、その探し物の途䞭で、少しだけ音に出䌚う。

それでたあ、今回も悪くなかった。

いや、かなり良かったのかもしれない。

シンガポヌルの街は綺麗だった。
でも、ただ綺麗なだけではなかった。

ちゃんず裏方がいお、生掻があっお、蚀葉があっお、音があった。

そしお私は、それを芋ながら、たたギタヌのこずを考えおいた。

困ったものだ。

でも、そういう耳でここたで来おしたったのだから、今さら仕方ない。

それでもたあ、今日もどこかで鳎っおいる。

少し遠くで。

でも、ちゃんず。

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